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XVL Solution World 2008 講演レポート

セミナーでの講演をレポートで公開します

事例紹介

ユーザー講演

国際宇宙ステーション 「 きぼう 」 - 日本実験棟を支える 3D モデル検索インタフェース

宇宙航空研究開発機構
有人宇宙環境利用ミッション本部 事業推進部 主任

橋口 芳季 様

本講演では、筑波宇宙センターにおける「きぼう」の運用管制業務を支えるデータベースについてご紹介をいただきました。

今回私ども宇宙航空研究開発機構 ( JAXA ) からは、XVL を利用した3次元検索インターフェースについて紹介したい。JAXA は日本の宇宙開発主導機関として、世界最高の技術を擁し自在な宇宙活動を確立することを長期ビジョンとして掲げている。

世界 15 ヶ国が参加する人類初の一大プロジェクト 「 国際宇宙ステーション 」 は、今まさに建設中で、JAXA は 「 きぼう 」 日本実験棟の建設と運用を通じて開発当初から貢献している。

有人宇宙開発では、設計・開発・組立情報の継承と、今後 10 年間にわたる運用情報の蓄積が期待される。そのためには、これらすべての情報を 「 きぼう 」 運用に携わる誰もが簡単に利用できる情報システムが必要となる。

平成 14 年以降、JAXA は 「 きぼう 」 開発用データベースシステムを運用している。このシステムは、開発に関わっている技術者向けのテキスト検索機能のみを有しており、「 きぼう 」 のシステムや H/W に熟知していないと十分機能を使いこなせなかった。

「 きぼう 」 開発の後半からは、将来運用に携わるグループもデータベースシステムを利用するようになり、視覚的・直感的な情報へのアクセス手法が求められた。また同時に、運用情報の蓄積という機能拡張も切望された。

運用に関わるすべてのスタッフがどこからでも直感的にアクセスできる検索インターフェース機能の実現には、XVL は不可欠であった。XVL 技術の導入により、開発用データベースシステムとは別に蓄積されていた CAD 情報システム上の 「 きぼう 」 の 3 次元 CAD モデルを検索インターフェースとしても利用できるようになり、テキストを打ち込まなくても視覚的に 「 きぼう 」 の構成品情報にアクセスすることが可能となった。

「 きぼう 」 開発・運用情報統合データベースは、今後 「 きぼう 」 上でも利用されることを想定して開発を進めている。実現すれば軌道上からディスプレイにタッチするだけで地上のデータベースへのアクセスが可能になり、運用管制との情報共有や、クルー独自での情報収集、空き時間を利用しての新規情報の習得などが可能になる。

JAXA は、「 きぼう 」 以外の他のミッションにも、ノウハウを広めたいと考えている。有人宇宙環境利用ミッションでは、2009 年度 に打ち上げを予定している HTV ( JAXA が開発する宇宙ステーション補給機 ) の開発と運用があり、これは複数回打ち上げられるので情報の蓄積と繰り返し利用への効果が期待される。

有人宇宙環境利用ミッション以外では、人工衛星や探査機等の開発・運用への利用を検討している。地球 / 天文観測・通信・測位・惑星探査などさまざまな目的に分けられる衛星開発では、製造工程からの情報も蓄積共有することで開発から終焉までをサポートし、開発者と運用者とがともに使えるデータベースシステム構築に貢献できると期待している。

XVL は、非常に軽快な 3 次元モデルとして群を抜いているが、情報のキャリアーとしても優れた能力を発揮する未来への技術であり、ものづくりに携わる全ての人々にも、情報利用の観点で新たな可能性を提供できると考えている。

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