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XVL Solution World 2008 講演レポート

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事例紹介

ユーザー講演

XVL を活用した仮想メカシミュレータによる、メカ制御ソフト開発の効率化

東芝メディカルシステムズ株式会社
検体検査システム事業部 開発担当 主任

加藤 晃 様

3 次元 CAD モデルを利用した XVL による仮想メカシミュレータを導入により、組み込みソフトの開発工期の前倒しや品質の向上に取り組んだ事例を紹介いただきます。

弊社は診断用 X 線装置、超音波画像診断装置など医療機器の開発・製造、販売、技術サービスを行っている会社である。今回、弊社製品の検体検査装置の開発を事例として、XVL を利用した仮想メカシミュレータ Vmech ( 現 XVL Vmech Simulatorの導入効果についてご紹介したい。

検体検査装置とは、採取した血液や尿などの成分を分析する装置だ。装置はハードウェアにあたる実機と、それをコントロールする制御ソフトウェアからなる。昨今の医療費削減の声の中、検体検査装置も装置自体の価格や試薬などの検査コストの削減、性能の向上、操作の簡便化と多機能化といった相反する要望、商品サイクルの短縮化など、多くの対応が求められている。こうした中、制御ソフトウェアもより高性能・高品質なものをより早く開発しなくてはならない。しかし、ソフトウェア開発が実機に依存していることがそれを妨げる大きな障害となっていた。

ソフトの仕様はメカ・電気の仕様・設計に依存し、また実機が出来上がらないとソフトの検証を始めることが出来ない。実機の開発が遅れればソフトの開発も遅れ、スケジュールや品質への影響が出る。また、実機の破損によるスケジュールの遅れや、実機を作成するためのコストの問題、発生した不具合の原因切り分けの難しさといった課題もあった。

こうした課題を解決するには、実機の動作シミュレータを導入すればいい事はずいぶん前から分かっていた。しかし、専用ソフトを開発した場合、かなりのコストや時間がかかることが予想され、また十分な性能が得られるかも疑問だった。そのため、シミュレータの導入を見送りつづけていたのである。

しかしそんな中、3D CAD データから機構シミュレータを構築する汎用メカトロシミュレータソフトがあることが分かった。専用に開発することに比べればコストや時間も抑えられると思われた。そこで実際にこのソフトを導入できるか評価を行い、その結果実用となると判断し導入を決定した。

今回導入した Vmech は 3 次元 CAD の形状データを利用して制御ソフトウェア開発向けの仮想メカモデルを作成、これを使って制御ソフトウェアの実機レスデバッグやシミュレーションを行うことができる仮想メカシミュレータである。データ形式には XVL を採用して高速な表示を実現している。XVL 形式に対応したことで、実機とほぼ同じ動作速度で動作が可能になり、実用レベルの検証環境となった。

実記レス開発環境導入の結果、実機の開発と並行して仮想メカ上でソフトの動作確認が行えるようになり、一番の目標だったソフトウェア開発期間短縮に成功した。また、システム要求仕様検討レベルのプロトタイプモデルを仮想メカで構築することで、実際に動きを見ながら動作仕様を検討することが出来るようにもなった。

今後はこの他にも、実機では発生させ難い異常状態を作り出したり、試験の自動化を行うといった効率化、要素開発・メカ設計への適用や開発者・サービスのトレーニングにも活用を広げていけるのではないかと考えている。

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