グローバルなもの作りを支援するエンジニアリングシステム
トヨタ自動車株式会社
エンジニアリングIT部 主査
川添 浩史 様
イベントレポート
セミナーでの講演をレポートで公開します
事例紹介
トヨタ自動車株式会社
エンジニアリングIT部 主査
川添 浩史 様
2007 年度には、世界 20 数カ国以上で 950 万台有余の車両を生産するトヨタ自動車、そのトヨタのグローバル化を下支えするエンジニアリング系システムの現状と今後の方向性についてご講演いただきました。
現在、トヨタの生産は国内から海外にその比重を移し、急拡大している。こうした成長と効率を両立するため、グローバル化する業務を支える IT 基盤整備が重要になってきている。こうした改革の一環として、2000 年代に入りトヨタでは内製 CAD から市販 CAD への切替えを行った。現在、トヨタ社内の切替はほぼ終わり、グループ全体でも、あとわずかで切り替わるといった状況である。この狙いは、データのグローバルな流通、競争力の確保、スピードUP・品質向上にある。
具体的に挙げると、ひとつには従来、人の頭の中などに散在していたノウハウを、CAD の中にデジタル化して組み込んでいくこと。これによって設計力を一定レベル以上に維持・増進、情報収集の簡略化、初期品質の向上に役立てている。そしてもうひとつは、こうしてできあがった 3D データを、あらゆる工程で徹底的に活用すること。
面・Solid 設計により後工程とのコミュニケーション向上。設計者が自ら CAE を行うことによる早期の設計品質の向上。造型分野では成形予測、更には、3D データをベースにした金型の世界同時立ち上げも検討している。
そして Viewer の活用。現在 XVL を利用している分野であり、構成部品表・作業要領書などを作っている。従来はポンチ絵を用いていたところを、3D ・ アニメーションの活用などによって視認性・情報の伝達性の高い指示書の作成・活用ができるようになった。また、大規模データのデザインレビューにも XVL を利用している。
例えばインパネアッシーは CAD で10ギガ以上にもなる。いくつかに分割して扱うしか無かったものを、XVL を用いることで分割することなく干渉・クリアランスのチェックを一気に行うことができるようになった。こうしたことがトヨタ自動車の中で現在行われている。
他には、レクサスギャラリーで 3D のデータを活用した高品質画像を表示して商談に活用するなどしている。3D のデータが短時間で1車型全て揃うことで、こうした利用も可能となった。さらにこうしたツール面だけでなく、併せて人間系の部分、設計者の CAD 操作スキルについても教育カリキュラムを見直して向上に力を入れている。
情報分野から見た今後のシステムの課題を考えた時、3D データをうまく活用しつくすことが重要だ。地道に仕事として、プロセスとして、回していく仕組みを作っていかねばならない。そのために弊社ではデータの整備と保証、流通管理、そして出図日程管理をする部署を設置した。
また、乱立していた出図、授図システムについても統一化を進め、図面に関しても 2D の図面から 3D の図面を正にする活動を進めている。セキュリティという問題もある。XVL は非常にポータビリティが高いため、よりセキュリティについても考えていかねばならない。
エンジニアリングシステムというと、いかに使うかを議論しがちであるが、まず先に自社の仕事のプロセスをどう改革するかをしっかりと考えていくことが重要だ。それが社内の IT 部門の人間の責務であり、ひいては業界の底上げをはかることができ、ものづくりに強い日本にラティスのようなソフトウェアがどんどんと出てくることにもつながるのではないかと考えている。
グローバルなもの作りを支援するエンジニアリングシステム
トヨタ自動車株式会社
エンジニアリングIT部 主査 川添 浩史 様
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XVL Solution World 2008 講演レポート