イベントレポート

XVL 3次元ものづくり支援セミナー2009 講演レポート

セミナーでの講演をレポートで公開します

事例紹介

ユーザー講演

企業弱点を克服する 3D での梱包仕様決定・製作管理

豊田合成株式会社
生産事業管理部 生産企画室 室長

東 晃 様

豊田合成は愛知県に本社を置き、自動車などの内外装部品事業など、他多品種の事業展開をしている。1949年の設立以来、売上高はここ 10年 で約 2 倍に成長し、拠点数も売上高に比例して、約 2 倍に増加している。

企業の弱点克服と発展に向けて

成長期においては組織力と成果主義で利益を確保し、成長した。しかし、現在では業務と人格の格差を是正する方向に流れが変わり、足元を固め、無駄を排除する方向に転換した。個人が自分の任務の価値を向上し、従業員全員とともに企業があるということを 「 D-PAD 」 という 1 つのツールを通じてご紹介する。

組織と役割

豊田合成には、5 人で構成される荷姿設定チームがあり、国内納入企画箱の梱包仕様と供給管理を行っている。各メンバーは、更に顧客、車両で役割を細分化している。

納入箱の作成量と費用割

年間約 20 万箱の新規の箱を製作しており、約 10 億円の膨大な投資をしている。梱包仕様は年間約 5,500 点について検討され、その中で内装を新規に作成する専用箱を必要とするものは約 1,000 点で約 300 種類ある。汎用箱を利用するものは 4,500 点あり、これらについては荷姿の仕様を検討する。

業務の 7 つの問題点

梱包業務には、下記の 7 つの問題があった。

  • 1.仕様決定リードタイムが長い
  • 2.箱の種類が多い
  • 3.収納効率が悪い
  • 4.各部署でもデータ活用が可能な発展性があること
  • 5.余剰箱が多い
  • 6.箱がない
  • 7.グローバルで仕様がバラバラ

長年、これらの問題の改善策が見つからなかったが、昨年、トヨタ自動車様より XVL データの 3 Dで梱包仕様のシミュレーションができるソフト、「 D-PAD 」 のご紹介をいただき、導入に至った。

3D 梱包仕様決定の流れ

まず、設計からの 3D データを使って箱への収納方法を決める。次に製品の月産数、収納効率、箱のサイズを考慮して比較検討し、最適なものがあった場合は既存の箱を流用する。適切なものがない場合は新規作成のため、内装材の仕様を決定する。内装材の仕様が決定したら、内装材を担当するメンバーに仕様書と 3D データの提供を行い、試作箱を作成する。

収納方法は自動で配列することもできるが、製品の向きを変え、製品同士を抱き合わせた形で収納するなどして箱への置き方を 3D で検討する。また、過去の仕切り方法を検索し、そのなかから最適な収納方法を選択することもできる。

仕切りを新しく作成する場合は、マスのサイズと配列が自動で調整され、仕切りの仕様が作成できる。事前に必要情報を入力しておけば、自動で Excel データとしてエクスポートし、箱のメーカに仕様書と 3D を渡して指示ができる。

D-PAD ( 3D ) ソフト導入後の業務の変化

  • 1. D-PAD 導入後は従来の図面・現物から 3D での梱包仕様決定に変化した
    • 図の一番上は顧客のリードタイムを表す。従来は現物を各工場から取り寄せてから、仕様決定を検討していたため、納入期限に間に合わないということが頻繁におきていた。現在は技術部門にある 3D のアッシーデータで仕様決定をするので、瞬時に決定できるようになった。3D でも現物との検証と同等の結果が得られている。結果、従来の工数よりも年間 2,650 時間の削減に成功した。現在では、年間約 4,550 時間かかる工場・仕入れ先間での箱の調整や、顧客先への出張調整工数の削減が課題だが、仕様決定のスピードが格段に上がり、工数削減につながっている。
  • 2. 製品の収納状態の設定をし仕様書のデータベースの中から適応する箱を選択する
    • 該当する箱と仕様の適用が可能であれば、流用する。これにより余剰箱を有効活用することができる。結果、品物 1 点につき、100 ~ 500 万円の費用削減につながる。また、余剰がない場合は既存仕様と設計書で製作指示ができるため、工数が削減できる。作ったものを最後まで使い切るので無駄がない。

  • 3. 製品の収納状態によりタイプ別の箱が瞬時に選定されるため最大収納数を瞬時に把握し、箱種の選定ができ工数削減につながる
    • これにより収納効率の悪さによる箱の作りすぎも抑制できる。顧客への早期仕様回答精度も向上した。
  • 4. 個人で同様の部品を仕様決定すると、同種の部品でも各個人でオリジナルの収納仕様が発生する
    • D-PAD では、1 人が箱種と収納数を選定し、残りのメンバーが作業性と品質の確認・調整ができるために価値の低下を最小限に抑えられる。箱の種類を統制し、専用化しないことにより、結果として 1 名分の工数を削減することができた。
  • 5. D-PAD を通じて、色々な発想が生まれた
    • 一つは個人の任務の価値向上である。例えば、汎用箱の収納効率を検証、補給品の包装や海外梱包仕様への適用、グローバルに標準化などの提案が出て、意識が変わってきた。このように改善意識が生まれることで個人の役割が生まれ、変革につながると考えている。

今後の展開と発展に向けて

生産拠点や仕入先、顧客へのネットワークによる仕様検討・決定により、各社の箱の共有を進め、グローバルに仕様を標準化し、総費用の低減を図る。D-PAD には 3 つのポイントがある。

  • 1.作ったものは使い切る
  • 2.余分なものを作らない
  • 3.専用化しない

個人がこれらのポイントを理解すれば、どんな状況であっても自信を持って業務を進められる。全員が共通して考えるべきことを1箇所にまとめたことで個人の任務を正しく理解させたことが D-PAD の成果だ。これにより個人力=プライドと自信、改善意識の向上が図ることができた。

まとめ

従来の組織の枠組みにとらわれず、本来あるべき個人の任務の領域の拡大と改善意欲の高揚をさらに目指したい。こうして生じた変化の渦は、発展と変革を成し遂げるための人的財産になると信じている。

講演レポート一覧


導入事例の詳細などご不明な点はお気軽にお問い合わせください。

XVL 3次元ものづくり支援セミナー2009 講演レポート