イベントレポート

XVL 3次元ものづくり支援セミナー2012 大阪 講演レポート

セミナーでの講演をレポートで公開します

事例紹介

ユーザー講演

「 バーチャルリアリティー 」 - 現実の 3D デジタル -

大豊精機株式会社

保証部 部長武田 英己 様

技術部(試作兼型G)坂田 和夫 様

愛知県豊田市に本社と生産拠点を構える大豊精機株式会社( 以下、大豊精機 )は、大手自動車部品メーカーである大豊工業株式会社のグループ企業として、主に自動車工場の生産設備、搬送設備、プレス金型や自動車足回り部品の試作~量産製造までを手掛ける 「 モノづくり企業 」 だ。

同社では、これらすべての製品の QCD レベルを高く保つための取り組みとして、「 実物の計測 」 を極めて重要視しているという。同社 品証部の武田英己氏は、「 現場が金型に対して行った微妙な変更を設計にきちんとフィードバックするためには、金型の正確な計測が欠かせない。量産部品も同様で、足回り部品は利用者の命を預かる大事な部品なので、品質にばらつきが出ないよう、実物を常に正確に計測する必要がある 」 と述べ、同社のもの作りにおいていかに計測技術が重要視されているかを強調する。

にここ数年間で、各種測定機器の精度が飛躍的に向上してきたことにより、従来にも増して広い分野に計測技術を適用するようになり、その取り組みの一部は同社の Web サイト( http://www.tsk.taihonet.co.jp/T-MAC/index.html )でも公開されている。中でも、カメラやレーザーで実物を 3 次元計測してデータ化する 「 3D スキャン 」 の技術に関しては、計測機メーカーと共同開発を進め、既に現場で広く成果を挙げている。

武田氏は、3D スキャンを活用する意義について 「 3D スキャンによる計測・解析データを適切に処理して、品証部門や設計開発部門の 3D CAD 環境、あるいは XVL 環境にフィードバックすることによって、品質の合否判定や組み付け確認など、さまざまな用途に役立てることができる。また、実物を基にしたリバースエンジニアリングも、高い精度で実現できるようになる 」 と説明する。

現在では、小規模で部品点数の少ないモノから、それこそサッカースタジアムのような大規模で複雑な構造物まで、あらゆる規模の対象物に対して 3D スキャンの計測技術を適用しているという。ちなみに、サッカースタジアム( トヨタスタジアム )の計測には 2 日間かけ、さらにそこで取得したデータを 5 日かけて 3D CAD でモデル化した。

同社は今、こうして蓄積した大型構造物のモデル化ノウハウを、既存のエンジニアリングスタイルに適用する取り組みを進めている。特に、生産工場や生産設備のスキャン・モデル化には力を入れているという。同社 技術部 坂田和夫氏は、実際に工場内部をスキャンして構築した 3D モデルを XVL で示しながら、「 2 次元データでは工場内部の柱や梁の位置・高さが直感的に把握しにくいが、3D モデルなら柱や梁も含めたバーチャルな空間の中で、これも同じく 3D スキャンした生産設備や工作機械のモデルをあれこれと自由にレイアウトできるようなエンジニアリングスタイルが可能になる 」 と述べる。

同氏は、XVL 化したさまざまな生産設備のモデルを実際に示しながら、3D スキャン技術と XVL を組み合わせることで、同社のエンジニアリングにさまざまなメリットをもたらす例を幾つか紹介した。さらに同社では現在、美術工芸品や昆虫といった対象物を 3D スキャンし、データ化するリバースエンジニアリングの試みも行っている。

大豊精機では、こうした 3D スキャンと 3D CAD、そして XVL を使ったエンジニアリング支援のさまざまなノウハウを、他社に対してもサービスとして提供しているという。坂田氏は、「 データは一度作れば、その企業にとっては永続的な財産になる。例えば、工場をスキャン・モデル化したデータは、その工場を取り壊すまではずっと有効だ 」 と述べ、このサービスがあらゆる分野のもの作り企業に新たな価値を届けるものであることを強調した。

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