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XVL 3次元ものづくり支援セミナー2014 講演レポート

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スマート BIM コンストラクションの実践 -大林組の BIM

株式会社大林組

本社建築本部PDセンター 上級主席技師福士 正洋 様

日本を代表する大手ゼネコンの大林組では、現在 「 スマート BIM コンストラクション 」 と呼ばれる取り組みを進めている。BIM とは “ Building Information Modeling ” の略称で、建築物の 3D モデルに建材の各種データやコスト情報、管理情報といったさまざまな属性データを付加したデータベースを構築し、これを建築プロジェクトの設計から施工、建物の維持管理に至るまでのすべてのフェーズで有効活用しようというもの。

日本国内においては、2009 年ごろから各ゼネコンによる取り組みが本格化しており、大林組でも 2008 年からいち早く BIM の研究と活用に乗り出している。現在では社内に BIM の推進部署 「 PD センター 」 を設置して社内普及を進めており、2015 年には同社が手掛けるすべての設計施工プロジェクトで BIM を適用することを目指している。

同社 本社建築本部 PDセンター 上級主席技師 福士正洋氏によれば、BIM の導入は社内外にさまざまなメリットをもたらすという。

「 3D モデルを使って干渉をチェックしたり、仮想空間上で施工のシミュレーションを行えたりするため、あらかじめ問題となりそうな箇所をプロジェクトの早い段階で解決できるようになる。また、プロジェクトの関係者同士で 3D モデルを共有することで、コミュニケーションの活性化や合意形成の早期化が期待できる 」

例えば、従来は 2 次元の構造設計図書と設備設計図書を重ね合わせて干渉チェックを行っていたが、これは熟練建築士でも多大な時間を要する作業だった。しかし BIM の導入により、3D ツール上で干渉ポイントを短時間で正確に把握できるようになったという。また、外部のメーカーが作った 3D データと、自社で作成した建物の 3D データを統合して干渉チェックを行う取り組みも進めている。さらには、外装や構造、設備それぞれの 3D CAD データを統合してデジタルモックアップを作成し、発注者や建物ユーザー、社外の設計事務所や専門工事会社などとの打ち合わせや施工手順の確認などに活用しているという。

大林組では、これら BIM への一連の取り組みを 「 スマート BIM コントラクション 」 と総称しており、現在ではさらにその活用を高度化するべく、「 スマート BIM モバイル 」 という新たな取り組みを進めている。同社は 2012 年、現場の技術職員向けに 3,000 台の iPad( 現在では 4,300 台 )を導入し、施工現場での配筋検査や設備検査などの作業で活用している。その活用過程において、現場のアイデアで自然発生的に 3D データの活用が始まったという。

「 2 次図面の替りに BIM から取り出した 3D データの画像を設備検査システムに取り込み、検査作業に活用していた。こうした活用法を見て、現場の点検・検査業務における 3D データのニーズの高さをあらためて感じた 」

そこで同社では現在、iPad と XVL を組み合わせた、施工時の各種検査や竣工後の建物点検アプリケーションを独自に開発している。BIM で生成した 3D モデルを XVL に変換し、iPad 上で表示させる。建築物の点検・検査作業に当たる担当者は、XVL の 3D モデル上で建築物の特定部位や部品を選択すると、関連する属性情報が自動的に社内システムからダウンロードされ、アプリケーション上で表示される。さらに、点検・検査結果を入力するフォーム画面が表示され、担当者は検査結果をここに入力する。こうして現場で入力された検査結果は、即座にサーバにアップロードされる。

現在ではさらに、このスマート BIM モバイルの使い勝手をより向上させるべく、CAD データから XVL へのダイレクト変換や、エクセルを使ったカスタマイズの仕組みなど、さまざまな機能強化を施しているところだという。

福士氏は、「 センサーデータや画像データなど、さらに広範なデータと連携したり、あるいは適用業務の範囲を広げていきたいと考えている。そのためにも、XVL 技術のさらなる進化に期待したい 」 と、今後のスマート BIM モバイル活用の展望を述べた。

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