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SPECIAL 対談|タツノ × 図研プリサイト × ラティス・テクノロジー
2022年5月10日
2022年
5月
タツノに学ぶ、製造業における DX の進め方
2022年2月16日、株式会社図研プリサイトと合同で 「『PLM x Web3D』 で実現する製造業 DX ~世界三大ガソリン計量機メーカー 「タツノ」 における保守サービス変革」 と題してウェビナーを開催しました。
今回の SPECIAL 対談は、当日実施した株式会社タツノ 取締役 羽山 文貴 様、株式会社図研プリサイト 代表取締役社長 尾関 将 様、ラティス・テクノロジー株式会社 代表取締役社長 鳥谷 浩志の 3名によるスペシャルセッション 「タツノに学ぶ、製造業における DX の進め方」 の様子をお届けいたします。
尚、記事末尾には、ウェビナー当日にお取り組みをご講演いただいたタツノ様講演レポートページへのリンクを設置していますので、併せてご覧ください。
鳥谷:
本日司会を務めるラティス・テクノロジー鳥谷です。
本日は、株式会社タツノ
早速ですが、昨今では社会情勢の変化も激しく、脱炭素に関しては、昨年日本も 2050年までに実質ゼロにして、カーボンニュートラルにすることを宣言ました。タツノ様を取り巻くビジネス環境について教えて頂けますか。
羽山:
私達は創業以来、主にエネルギーと車に関連する技術に取り組んでまいりました。今話題になっているエネルギー変革、すなわち脱炭素に関しては、環境問題という観点では好ましいことではあるのですが、我々にとっては大きな変革が求められています。
鳥谷:
車でいうと、先日トヨタ自動車様が、EV (Electric Vehicle:電気自動車) のグローバル販売台数を 2030年に、350万台へと大幅に引き上げることを発表されました。
羽山:
欧州で EV 化が進む中、日本は EV 化がそこまで進んでいませんでした。しかしトヨタ自動車様の発表で、日本でも EV 化が進むことが明確になったと思います。エネルギーと車の領域で、大きな変革が起こる中で、その変化についていかなければならないと考えています。
鳥谷:
こういう変化が激しい時代、IT で会社を変えていくことが大事になっていくと思うのですが、変化に対応する IT、DX (デジタルトランスフォーメーション) についてどのようにお考えでしょうか。
羽山:
私自身、厳密に何が DX なのかを理解していないかもしれませんが、広義では、データを如何に活用するかということだと思っています。データ自体は存在していても、分断されていることが多く、一元化することは、業務の効率化に大いに役立ちます。DX をやるんだというより、持っているデータを一元化し、活用していこうと取り組んでいます。
鳥谷:
我々も 「3D デジタルツイン」 でデータを共有し、活用して行こうとしておりますので、タツノ様の考えられていることと合致しているのかと思います。図研プリサイト様は、「Visual BOM」 を納入されているわけですが、どのようにタツノ様の DX に貢献されているのでしょうか。
尾関:
羽山様のお話にもありましたが、“部門間のデータを繋げて意思決定のスピードを上げる“ ということをゴールに据えて、レガシーの刷新に留まらない IT 活用を進めていくことが製造業での DX では大切だと考えています。
Visual BOM のような PLM (Product Lifecycle Management) システムは、設計、製造、保守にわたる製品情報の流れであるエンジニアリングチェーンを支援する役割を担っています。エンジニアリングチェーンの源泉は CAD で作られる設計データであり、CAD と PLM のシームレスな連携なくして DX や IoT は成し得ません。CAD と PLM のシームレスな連携というのは Visual BOM の特長で、他の PLM との違いでもあります。
鳥谷:
先ほど羽山様の話の中で、データを活用することで DX に近づいていくのだというお話がありましたが、CAD のままだと設計者しか使えないという状況がある。そこで Visual BOM と XVL を活用されていると思うのですが、その辺りはいかがでしょうか
羽山:
実際 3D CAD は、かなり前から導入しておりましたが、あくまでも設計者が設計、検討のため作っており、後工程のことは考慮されておりませんでした。しかし、設計者が時間をかけて、完成度の高いデータを作っているにも関わらず、設計にしか使われていないのはもったいない。それを活用したいというのは、一番大きな目的でした。
鳥谷:
今回のプロジェクト(参照:株式会社タツノ講演レポート)に話しを移していきたいのですが、STEP1 、STEP2 に分けてプロジェクトを進めたとのことですが、経営視点からどのようにプロジェクトを進めたのでしょうか。
羽山:
元々は PLM の刷新から始まったのですが、刷新に留まらず、改善できる点があるのではと視野を広げて検討しました。その結果、Visual BOM が良いということになりました。当初は、今までとあまり変わらない使い方をする予定でしたが、自社の課題を解決する、より良い活用ができるのではということで、STEP1、STEP2 でより進んだシステムにしていこうと考えました。
鳥谷:
私も製造業の DX を色々見てきてますが、今回のプロジェクトに関して、サービス BOM 作成を自動化されたことが非常に重要なポイントだと思いました。自動化の仕組みがなくて、なかなか運用に乗らないというのは良くあります。今回のプロジェクトは、どのような着眼点からきたんでしょうか。
羽山:
導入したシステムは、他の部署でも活用できるのではという検討から始まり、紙ベースで動いていたパーツリストでも使えるのではという意見が現場から出てきました。サービス部門とディスカッションしていく中で、効率が飛躍的にあがるという意見ももらい STEP2 で取り組みました。
鳥谷:
お客様ごと 3D デジタルツインを用意して、サービスの体制を作るのだというところも、もう一つの重要なポイントだと思います。この取り組みについて、尾関様からはどのように見えていたのでしょうか。
尾関:
PLM、3D の全社活用というのは、我々が理想として掲げているところでもあり、今回のプロジェクトを支援できているのは望外の喜びです。羽山様のお話をうけて二つお話させてください。
まず一点目としては、今回のプロジェクトでは、羽山様の強力なトップダウンがあってこそ、サービス部門まで展開できているということです。日本の製造業は決してデジタル化が遅れているわけではありません。しかし多くの企業ではデータが個人資産として埋没しており、活用の面で諸外国の後塵を拝しているのです。データの活用レベルを上げて企業資産化するには、作成ルールや運用規定に準ずる必要があり、この取組みを推進するにはトップダウンが不可欠なのです。
鳥谷:
実際にどこあたりをトップダウンで進めたのでしょうか?
羽山:
設計者は、自分のために 3D を作っているところがあり、そのデータを後工程で使う発想はあまりありません。設計者にとっては、自分の得にはならないので何故そこまでやる必要があるのかとなるのですが、全社でメリットがでることを理解してもらえるよう、丁寧に説明し納得してもらいました。
鳥谷:
それは、まさしく経営サイドの仕事ですね。
尾関:
二点目は、2段階に分けた構築プロジェクトで、STEP1 に留まることなく、速やかに STEP2 に進まれたという点です。今回 STEP1 では既に運用されていた VisualBOM をアップデートし、E-BOM の自動生成など業務の効率化を主体に実施しました。
現場が効果を実感しやすい個別最適化視点の取組みを STEP1 に置き、部門横断のイノベーティブな取組みを STEP2 に持ってくるということ自体は、珍しいアプローチではありません。しかしながら、STEP1 の効果で満足してしまい、調整が困難な STEP2 を先送りにした挙句、尻すぼみとなってしまうお客様は少なくありません。タツノ様は STEP1 完了から程なくして STEP2 に着手し、速やかに最終ゴールへ到達されています。これは非常に示唆に富む事例だと思っています。
鳥谷:
先ほどの羽山様の話と合わせると、トップダウンと、ボトムアップが上手く噛み合ったということでしょうか。
尾関:
当然他の会社様と同様、スムーズにいかれない部分も多々あったのだとは思いますが、その中でも着実にゴールまで歩を進められたということが素晴らしいことだと思います。非常に有意義なプロジェクトだなと支援させて頂きながら感じておりました。
鳥谷:
DXで そこまで首尾よく進めることは、なかなか多くないですね。DX の模範となる進め方です。今回プロジェクトを進める上でのチャレンジはどのあたりにあったのでしょうか。
羽山:
データが全部揃っていない中、スタートしたことはチャレンジだったと思います。全部データが揃ってから進めるという考え方もありますが、いざ着手した際には時代遅れになっているでは話になりません。
鳥谷:
我々のユーザでも 70% しかデータがないのでやりませんというユーザと、70% もあるのでやりますというユーザがいます。が、大概成功しているのは後者です。70% でも成功イメージができるようになると、残りの 30% のデータも整ってくるのでしょう。ところで、現場がぎくしゃくする場面もあったと思うのですが、いかがでしたか。
羽山:
私自身が設計も製造にも携わった経験があり、設計者の気持ちは良くわかりました。ある段階までいくと設計としては完成しており、その先の部分まではなかなか続けられない。なので割り切って、その先の部分を補完するメンバーを用意して、データを補いました。
尾関:
羽山様がおっしゃられたように、慎重に検討することは重要ですが、時間をかけすぎると計画自体が古くなってしまうため、この環境変化の激しい世の中では、スマートな進め方とは言えないのだと思います。
近年アジャイルということが良く言われていますが、今回のプロジェクトは、正しくそれを体現されたプロジェクトだと思います。走りださないと見えないところがあり、その一歩を踏み出す胆力、決断力、実行力がリーダーには求められているのだと思います。そういったところがプロジェクトを進める中での大きなチャレンジであったでしょうし、着実にここまで進んできた推進力になっていると感じています。
鳥谷:
目的を見据えて、結果を素早く出して、課題には迅速に対応し、味方を増やしていくのが成功の秘訣だったのでしょう。最後に今後の展望を教えて頂けますでしょうか。
羽山:
これまでガソリン計量機をメインで作ってきましたが、今後どう変化していくかは誰もわかりません。どういう製品でも、どういうビジネススタイルにでも、対応できるデータやシステムを作っていくことが重要だと思っています。
鳥谷:
EV になろうが、水素になろうが、使えるシステムを構築するということですね。この先に、サプライチェーン系とエンジニアリング系のシステムを統合していくという計画もありましたね。
羽山:
今ももちろん生産管理のシステムも使っていますが、今後サービスパーツの受発注までプロジェクトを進めて行くと、生産管理との連携が必要になり、そこまで是非やりたいです。そのポイントはデータの活用というところが基軸となってきます。
鳥谷:
この点は、尾関様からの提案もあるのですよね?
尾関:
タツノ様の使われている SCM (Supply Chain Management) システム 「mcframe」 は、我々と同じ企業グループに属しているビジネスエンジニアリング株式会社のもので、システム連携の親和性は担保されています。川上から川下への一気通貫のデータの流れができましたので、次はそれを再度上流に循環させる流れを作ることが大きなテーマになるかと思っています。さらには見積設計の高度化や、3D と VR、AR や BOP の組み合わせ、またデジタルツインをさらに推し進めていくというところでもご提案、ご支援したいと考えています。
鳥谷:
最後に羽山様、我々ベンダーにメッセージを頂けますか。
羽山:
新しい機能や提案は期待しております。有用なものは、どんどん採用したいと思います。
鳥谷:
今後も尾関様と協調してタツノ様の成功に貢献していきます。羽山様、尾関様、本日は貴重なお時間を頂戴し、誠にありがとうございました。
END
・本対談記事は、2022年2月16日に開催したウェビナー 「『PLM x Web3D』 で実現する製造業 DX ~世界三大ガソリン計量機メーカー 「タツノ」 における保守サービス変革」 で行われたスペシャルセッションの内容をまとめたものです。
・XVL、3D デジタルツイン はラティス・テクノロジー株式会社の登録商標です。その他記載されている会社名および製品名は各社の登録商標または商標です。
当日ご講演いただいたタツノ様のお取り組み
「実効性のある製造業 DX を目指して ~ 『M-BOM/S-BOM x Web3D』 による保守サービス業務変革」
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