導入事例インタビュー
新潟原動機株式会社
先進企業の事例に学び、自社向け活用の具現化へ。
3D活用の進化に挑戦する「新潟原動機株式会社」
※2009年のインタビュー記事となります。
会社概要
新潟原動機株式会社
設立期日 | 平成15年2月4日(2003年) |
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本社 | 東京都千代田区 |
資本金 | 30億円 |
事業内容 | ディーゼルエンジン(舶用・陸用・車両用) ガスエンジン、ガスタービン、Z形推進装置、発電装置 ガイスリンガー継手、ダンパー、燃料噴射関連機器 潤滑油清浄機、鋳造品 |
ホームページ | https://www.niigata-power.com/indexj.html |
XVL導入背景
3D CADの導入とDRの概念との出会い
新潟原動機は、ディーゼルエンジン、ガスエンジン、ガスタービン、Zペラを主力商品としている。業務効率の改善をテーマに積極的な3Dデータ活用を展開しており、現在もさらなる改善に向けて取り組みを進めている。3D CADの導入からはじまり、XVLを使った3Dデータ活用で効果を上げていくまでの過程を提案したのが、技術センターのプラントエンジニアリンググループに所属する福岡氏だ。
2003年、まずは3Dデータ活用のために3D CADの必要性を社内提案した。3D CADPro/ENGINEERを導入し、CADビューワを使って3Dデータをスクリーンに投影して、皆で見ながら打ち合わせをしていた。当時は、まだ3Dになじみのない人たちが集まったため、モデルが3Dで動くことの目新しさに注目が集まっていた。一例として、分解したプラントを搬入口から入れられるかを検討した。これを見たプラント建設部門のベテランが「3Dはわかりやすくてよい」と評価し、皆で3Dデータを見ることを率先して推進した。
この頃、完成したプラントのイメージをプリントして、建設現場の壁に貼ることをはじめた。現場の人たちは、休憩時間に貼られた絵を指差し、次の作業工程をどう進めるかといった検討を始めていた。このようにして、3Dデータが設計データの検証に有効だという感触を得た。
こうして3D化が順調に進んだ結果、2005年には、データの容量が肥大化し、CADビューワを使ってもモデル全体を表示できないという問題が発生した。福岡氏は、この課題を解決するために情報収集を開始する過程の中で、トヨタ自動車の新型車両バーチャル開発システム「V-Comm(Virtual & Visual-Communication)」などの事例から、関係者が集まって、設計データを検証するデザインレビューの概念を知ることになる。
XVL活用事例
3D CADと朱書きのコメントを使ったDR
2005年、デザインレビューの重要性が認知され、パイオニア社のサイバーボードシステムを導入した。CADビューワで3Dデータを表示した50インチの画面上に、朱書きでコメントを入れ、デザインレビューを行っていた。当時は朱書きのコメントの入ったJPEG形式のイメージデータと議事録を元に、設計データの修正を行っていた。ここでの課題は、システム導入にかかる高い費用と、イメージデータの保管だった。
XVLの導入決定
情報収集を進めていた福岡氏は、2006年5月、XVL Solution World 2006に初めて参加した。ここで行われたトヨタ自動車の原田氏の講演に感銘を受けた福岡氏は、XVLこそ3Dデータ活用の課題を解決する手段だと認識し、程なくして、社内でのXVLソリューションの導入提案を進める。
初に試行したのが、機器搬入の際のシミュレーションだった。XVLデータのプラントデータにあわせて搬入用エレベータのサイズをボックスで書き、どこをどのように分解する必要があるかを検証した。
プラントそのものの大きさが把握できるとともに、分解の必要箇所の把握に役立ち、関係者に好評だった。
また、生産現場では、3Dモデルをクリックすると、その部品名がわかるという仕組みが評価されていた。今は、生産現場の人たちが、より気軽に、抵抗なく3Dデータを参照できるような仕組みの構築を考えている。
新潟原動機でのデザインレビュー
新潟原動機で行われるデザインレビューには、以下の2つの種類がある。
・プラントエンジニアリング部の設計部門内でのDR
→設計初期段階での設計データレビュー
・部門をまたいだDR
→プラントエンジニアリング部が設計するプラント側担当モデルと工場の設計部門が設計する機関本体部分とのすり合わせ
また、生産現場では、3Dモデルをクリックすると、その部品名がわかるという仕組みが評価されていた。今は、生産現場の人たちが、より気軽に、抵抗なく3Dデータを参照できるような仕組みの構築を考えている。
新潟原動機では、これらのDRではすべてXVLを使って行われているが、重要なのは以下のポイントだ。
・モデル全体を表示し、軽快に操作できること。(複数モデル,計画案を同時に表示)
・拘束条件などがなく、自由に部品移動などの検証ができること。
・デザインレビューでの議論の結果を議事録として残せること。
・DR時のモデル操作がCADの設計モデルに影響を与えないこと。
デザインレビューでは、CADの元データではなく、XVLで検証を行う。CADでは重くて表示が難しい全体モデルを表示し、CADでは拘束条件がついていて難しい部品移動なども自由に行える。XVLでどのような検証を行っても、CADで設計されたマスターデータには影響を与えないため、CADで設計されたモデルを誤って変えてしまう、壊してしまうといった間違いが起こらない。また、検証結果を議事録として残し、承認された事項を実際の設計データに反映していくことで確実な対応が可能になる。
こうして、設計データが仕上がり、出図前の干渉チェックの際にもXVL Studioが活用されている。CADの干渉チェックに比較して、データが軽いために計算時間が短くてすむこと、干渉・接触・クリアランスの3つを同時にチェックできることが利用している設計者たちに高く評価されている。
これらの3Dモデルは、新潟原動機にて行われる現場の工事担当者への説明会でも活用されており、3Dを使った説明はわかりやすいと喜ばれているという。
XVL今後の展開
XVLを使ったデザインレビューの効果
このように新潟原動機の社内ではXVLを使ったデザインレビューを進めていったが、その効果はどのようなものだったのか。 当時の福岡氏の上司は、「3Dデータ活用により全体が見えるようになる。
そして全体が見えることで、今まで見えなかった問題が見えるようになる。たとえ、まだ解決しない問題があったとしても、問題が顕在化することで、課題解決のための次のステップを検討できる。
これが3Dデータ活用の最大の効果だ」と語った。 こうした設計データのレビューは、設計が2割ほど進んだ段階から始める。設計が進んでからの修正では、後戻りの手間が増大して効率が悪いからだ。デザインレビューでは、必要な要件を満たした設計データができているかの確認と修正すべきことの指示を確実に行うために行われている。どのような設計思想で設計されているのか、不明な点などが見えるようになり、設計品質の向上にも貢献している。
このように、設計の初期段階から各部門の関係者を集めてデータを見て問題を議論し解決すれば、製品ライフサイクル全体での問題が減っていく。これは、自部門の問題以外は関心が薄い従来の状態、つまり「部門の壁」を克服する有効な手法だった。
現在では、低価格の家庭用液晶テレビと画面共有ソフト、音声共有システムを用いた会議システムを打ち合わせコーナーに設置している。会議室のように予約や事前のアナウンスなどを必要としないスペースにこれらの機器を置くことで、誰もが手軽に3Dデータを使った打ち合わせを行えるようにした。
実際にこの会議システムを使って、工場と本社でプラントのデザインレビューを行っている。XVLの操作に慣れた本社側がXVLデータを操作することで、工場側が操作に慣れていなくても、3Dを使ったデザインレビューが手軽にできる。これまでは、工場に出向いて、現場でデザインレビューを行っていたため、出張費の削減にも貢献している。また、これまでの図面のカラーコピーや配布資料の準備などが必要なくなり、ペーパーレスにも貢献した。
XVLを浸透させる施策と今後の取り組み
こうして、何度も行われるデザインレビューで3Dデータになじんだユーザたちは、次第に自分で3Dデータを操作したいと思うようになる。
そこで、さらに社内にXVLを浸透させていくために必要なのが、機能を絞って誰もが簡単に操作できるようにした簡易ビューワだ。現状のXVL Playerの基本機能のみを搭載した使い勝手のよい簡易ビューワを初心者ユーザに提供することで、XVLを使えるユーザの増加が期待できる。
これまでも、ビューワ機能のみのXVL Playerで3Dデータを扱い始めたユーザが、編集機能が充実したXVL Studioを使い始めると、使いやすさと機能の豊富さから、XVL Playerに戻ることはないという。こうして、現在、新潟原動機には、XVL Studioを使いこなすユーザが8人ほどいる。福岡氏は、XVLユーザを増やしていくことで、「社内でXVLを使うことはあたりまえ」という文化を自然に作っていきたいと考えている。
また、デザインレビューの議事録作成もXVL Studio上の注釈ビュー機能を使うことで、より手軽に作成できるようになっている。新潟原動機ではこの機能も活用し、さらなるデザインレビューの効率化に取り組んでいる。
※2009年のインタビュー記事となります。
導入製品
製品詳細情報
XVL Studio Pro XVL Studio Standard XVL Converter Light Lattice 3D Reporter
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