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コラム|製造業の DX に 3D で貢献する|第十二回:動く 3D デジタルツインを DX に活かす

2020年12月10日

第十二回:動く 3D デジタルツインを DX に活かす

執筆:ラティス・テクノロジー株式会社 代表取締役社長 鳥谷 浩志

欧州での感染再拡大が気になる中、『ウイルスの世紀 ―なぜ繰り返し出現するのか』(山内一也著)という本を読みました。ウイルスの自然宿主のコウモリには 137種類のウイルスが発見されており、そのうち 61種類がヒトに感染するといいます。コウモリにとってウイルスは無害であり、だから、宿主もウイルスも生き続けます。新興国において、人口が増え開拓が進むと、ヒトが自然の中まで入り込み生活を始め、家畜も含め野生動物との接触の機会が増えます。当然、ヒトへの感染の可能性が高まり、感染したヒトの移動によりそれが世界中に広がってパンデミックを引き起こすというわけです。ウイルスが生存し続ける以上、ヒトは多様なウイルスとの共存を強いられます。ワクチン開発も途上で、With コロナの時代も数年は続きそうです。我々ヒトは新しい生活様式や働き方を確立していく必要があるでしょう。今回は、製造業の新しい働き方を実現する有効な手段として、3D デジタルツインを動かす XVL Vmech Simulator(以下 XVL Vmech)で実現する DX を紹介しましょう。

量産立上げ時に工場で起こっていること

マーフィーの法則に 「順調に見えても必ずどこかにミスがある」、「大事な予定がある日に限って必ず残業になる」 といったものがあります。これを痛感するのが工場の立ち上げ部門ではないでしょうか。上流工程における試作時に問題が発覚、設計に手戻りが発生、一方、製品の出荷スケジュールは動かせない、したがって、工場の量産準備で遅れを挽回せよという話をよく耳にします。

量産準備では、生産設備を稼働させる必要があります。通常であれば、設備のメカ設計をした後、その設備を動かすための制御ソフトの開発に入ります。そのため、すべてのしわ寄せは最下流にいる制御ソフトの開発担当部門に集中してしまいます。

量産立上げ時に工場で起こっていること
量産立上げ時に工場で起こっていること

大急ぎで開発した生産設備は、実機で検証しながら、設計通り動くよう調整しますが、なかなか想定通りには動きません。ダンマリと呼ばれる機械が停止したままの状態で動かない、動いたと思ったら、異常な動作でせっかく製作した機械を破損してしまうといったトラブルになることもあります。こうならないよう、納期に間に合わすべくソフト開発の部門は残業となります。

ところが、ここで不思議なことがよく起こります。課題がメカ設計にあるのかソフト設計にあるのか分からない場合、実機の取り合いになり、デバッグ作業が進められないのです。残業残業で対応しているのに、実機をメカ担当部門が見ているときには、ソフト担当部門は実機が空くのをただ待っているだけです。誰もが早く手を打ちたい、自分の手は空いているというのに、何もできない、これを解決するにはどうしたらよいでしょうか?

制御ソフト開発に 3D デジタルツインを使う

ここで活躍するのが 3D デジタルツインです。まず、下の動画をご覧ください。生産設備の制御ソフトは通常 PLC(Programmable Logic Controller)という自動制御装置の上で稼働します。制御ソフトはラダーや C といった言語で記述されます。具体的には機械がどう動くのか、その動作を順序立てて記述します

この動画では、同じラダープログラムが 3D モデルと実機の両方を制御していることが分かります。まさに、3D デジタルツインが実機のごとく動作しています。ということは、実機がなくても 3D デジタルツインで制御ソフトの動作を確認し、デバッグすることが可能になり、「実機待ち」 という問題を解決することができます。

XVL で表現された Virtual(仮想)のメカが機械の動きを再現するという意味で、このメカトロ検証ソリューションは XVL Vmech と呼ばれています。この上記動画では、シーケンサという言葉も出てきます。PLC 国内最大手の三菱電機の商品名がシーケンサです。機械の動作の順序(シーケンス)を制御する機械という意味でシーケンサと名付けたのでしょう。

さらにこの動画では、実機と XVL で表現された仮想メカ(3D デジタルツイン)の動作を、シーケンサ上の同じラダープログラムが制御しています。そして、実機の動作をデジタルに再現するソリューションが XVL Vmech ということになります。XVL の持つ大容量 3D 表示の高速性という優位性により、複雑な生産装置も 3D で表現できますし、さらに、稼働する軸が多数あってもシミュレーションできるというのも大きな特徴です。

特に、XVL Vmech はシーケンサとは直結しており、高速なシミュレーションを実現することができます。これを使うことで実機調整の時間を劇的に減らすことができるでしょう。それでは、このように動作する 3D デジタルツインをどうすれば創ることができるでしょうか?

動く 3D デジタルツインをコミュニケーションに使う

動くモデルを作成するには、設計の作成した 3D デジタルツインに駆動軸を定義していきます。どこがスライドするのか、どこが回転するのかを定義し、それがどのタイミングでどこにあるべきかをタイミングチャートで指定します。こうして、動く 3D デジタルツインを創ることができます。動かしてみると、実は可動部が想定外の干渉を起こしていることもあります。このように、動く 3D デジタルツインでメカモデルの課題を早期に発見し、解決することができます。

動く 3D デジタルツインモデル
動く 3D デジタルツインモデル

実は、タイミングチャートによって動く 3D デジタルツインはメカの動作がどうあるべきかの仕様を表現しています。これは、ソフトで制御すべきメカ動作の仕様になります。これまで、メカ担当部門はソフト担当部門へ、動作仕様を口頭であいまいに伝達することも多々ありました。明確に 3D で仕様を定義することで、正確な情報伝達が可能になり、その制御ロジックをプログラム化することで、メカ設計者の意図する通りメカが稼働することになるのです。

動作仕様、つまり、制御ロジックの仕様が明確になれば、ソフト担当部門は制御ソフトをラダーでくみ上げます。こうして作成されたラダープログラムに従って、稼働する単純化した設備の動画をご覧ください。

ラインの上をワークが移動し、そのワークがプレス機のところまで移動してくるとプレスし、ロボットのところまで来るとロボットがワークを別のラインに移動するという簡単なものですが、ラダー言語に従って、3D モデルが制御されている様子が分かるでしょう。こお動画から分かるように、XVL Vmech では、センサーを置いて部品が移動してきたかどうかもシミュレーションできるようにしています。

社内の生産設備の開発を外部の協力会社に依頼することもあるでしょう。最近では、社外の協力会社から設備の仕様を説明する際、XVL Vmech を利用して、3D でプレゼンテーションするというケースも増えています。複数の部門で協調して作業をする場合、なるべく上流で設備仕様を共通に理解しておくことは、後々の手戻りを少なくするための有益な手段です。複数の部門、会社に作業が分かれる場合には、動く 3D デジタルツインは重要な武器になるのです。

動く 3D デジタルツインでプロセスを変える

このように 3D デジタルツインを活用することで、生産設備開発のプロセスを変えることができます。そこには 3つのポイントがあります。

  • 実機検証の前に徹底的な仮想検証をすることで問題を明らかにし、必要に応じてメカあるいはソフトの修正を行い、再度検証しておくこと。これにより、実機検証と調整の時間を大幅に短縮することができます。
  • メカ担当部門で、駆動軸の整備された3Dデジタルツインと動きを規定するタイミングチャートを整備すること。この過程でメカ設計や制御仕様の問題をつぶし込み、実機検証時に発生する不具合を最小化することができます。この結果、実機待ちの時間がなくなるとともに、メカの動きまで含めた設計の意図をソフト担当部門に的確に伝えることができます。
  • ソフト担当部門はメカ仕様が確定した早い段階からソフト設計に入ること。制御ソフトの開発が早期に終わっていれば、その分 XVL Vmech を利用した制御ソフトの仮想検証を早期に始めることができます。
動く 3D デジタルツインでプロセスを変える
動く 3D デジタルツインでプロセスを変える

この 3つの相乗効果が量産開始までのリードタイムの短縮につながります。旬のある商品、たとえば、年賀状印刷を行うプリンターのようにある時期までに一定量の製品を生産しておく必要があるものは少なくありません。また、同等の製品を持っているのであれば、競合他社より早く市場投入することが、大きな競争力になります。3D デジタルツインを組織間で共有することで、新しい開発プロセスを実現し、他社に先駆けた製品投入という果実を手にすることができるのです。

コウモリはヒトに近い哺乳類であり、しかも飛びます。身近に飛び回るコウモリに存在する 137種類のウイルスからの感染を止めることはほとんど不可能でしょう。これに対し、感染症の世界ではワンヘルスといって、「野生動物 ― 家畜 ― ヒト」 のすべての健康を等しく保つ方法も模索されているといいます。人類の知恵が試されています。

製造業の世界でも、IT を利用した新しい生産方式、ビジネスモデルが求められています。今回は、動く 3D デジタルツインを使ったものづくりプロセスの変革を紹介しました。XVL Vmech に関しては、開発の経緯を語った対談もあるので、そちらも参照(SPECIAL 対談|東芝インフラシステムズ × ラティス・テクノロジー|バーティカルなデジタルツインで GAFA に挑め!ください。

制御ソフト開発という人海戦術に頼った分野でも 3D デジタルツインによる情報の流れを創ることで、擦り合わせを得意とする日本の強みを生かした DX を、実現できるようになったのです。

今回のお話はここまで。次回のコラムをお楽しみに。

(関連 XVL 情報)
・XVL Vmech Simulator:紹介ページ(サイト内ページにリンクします)

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