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コラム|製造業の DX に 3D で貢献する|第十一回:3D でビジネスモデルを変える

2020年10月26日

第十一回:3D でビジネスモデルを変える

執筆:ラティス・テクノロジー株式会社 代表取締役社長 鳥谷 浩志

世界の新型コロナの死者は 9月末に 100万人を超えました。同時期における日本の新型コロナによる百万人当たりの死者数は 12人、米国は 620人だという。都市封鎖をしなかった日本は、経済への痛手も相対的には小さかったといえるでしょう。一方、新型コロナは社会の最も弱いところを突くとも言われます。日本は国も企業もデジタルを使わないことによる生産性の低さを突かれました。国は 「紙とハンコの文化」 を、製造業は 「現地現物と紙図面の文化」 を変革することが求められています。国も企業も DX(デジタル・トランスフォーメーション)を進め、データの流れを創るとともに、そのデータの活用範囲を広げていく必要があります。生産性を高める手段として効果的なものの一つが、一度作成したデータの価値を最大化すること、つまり、そのデータを徹底活用することです。今回は、サービスや営業にまで、3D データの活用範囲を広げることでビジネスモデルの変革を促す XVL Web3D の実例を紹介しましょう。

● 非効率なパーツカタログ作成の実際

まず、サービス分野における 3D データ活用について、製品のサービスに必要な情報を取り出すためのパーツカタログを例に説明します。パーツカタログは、部品形状を示すイラスト部と部品のサービス情報を示すリスト部の二つからなります。多くのメーカーでは、この作成を外注しています。かつて、あるメーカーのパーツカタログ作成の現場を見学したことがあります。そこで見た風景は衝撃的でした。メーカーから入手した 3D CAD データを分解し、個々の部品のイラストを手動で作成し、サービス情報は大量に印刷された紙情報でもらい、人手でパーツ情報を入力しイラストに紐づけていました。もちろん、成果物のパーツカタログは紙配布です。下図の青と水色の作業をすべて人手で行っていたのです。

手動によるパーツカタログ作成
手動によるパーツカタログ作成

● 非効率なパーツカタログ作成の実際

そこで、3D デジタルツインとなる XVL モデルさえあれば、自動でパーツカタログを作成する仕組みを考えました。3D デジタルツインには設計の部品表と 3D モデルが正しく紐づけられています。それがあれば、設計の構造を分析し、サービス部品表とマッチングすることが可能になります。3D モデルから分解図も自動生成でき、分解図の中の部品とその部品のサービス情報、つまり、パーツリストを自動的に紐づけることができます。パーツカタログの書式に従って、それを Web 上のコンテンツとして生成することができるので、先ほど手作業で行っていた作業はほぼ自動化することができるのです。この原型となったのが、2001年に発売した XVL Web Master でした。

PLMデ ータを利用してパーツカタログを作る
PLM データを利用してパーツカタログを作る

● パーツカタログを 3D で配信する

この XVL Web Master をベースに、外部からのサービス情報を最適な形で取り込み、自動化レベルを究極まで高めたのが第二回で紹介したドイツのパートナー TID Informatik GmbH(以下 TID、https://www.tid-informatik.de/が開発した CATALOGCreator です。

このシステムでは、第九回コラムで紹介した XVL Web3D 技術も採用し、2D のイラスト図の代わりに 3D モデルを分解表示することで、3D のパーツカタログを配信することを可能にしています。3D デジタルツインから Web 上の 3D パーツカタログを自動生成するためのソリューションが実現したのです。もちろん、パーツリストの情報と3Dモデルは相互にリンクされており、自在にサービス情報を取り出すことができます。

これを Web で配信することで、世界中のサービスマンがタブレットで参照し、顧客からの修理の要望に応えられるようになります。3D データを参照する人の数が飛躍的に増え、設計の 3D データの価値が劇的に向上したことが分かります。

TID Informatik GmbH の CATALOGCreator
TID Informatik GmbH の CATALOGCreator

● パーツカタログシステムを軸に DX を実現する

ここまでは効率化と省人化であり、いわゆる Digitalization です。大事なのはここからです。ドイツの CATALOGCreator のユーザーは、顧客ごとにセミカスタマイズされた製品を開発するメーカーが多いと言います。そのようなメーカーでは、カスタマイズ製品ごとに、その 3D デジタルツインとなる XVL モデルを準備し、3D パーツカタログを自動作成します。

現場で故障した部品が簡単に特定できるようになれば、当然、そこから部品の受発注をしたいというニーズが生まれます。受発注システムとつながれば、世界のどこで、どんな部品の発注が多いのかも分かるようになります。これは、つまりどの部品が壊れやすいかという情報であり、設計の改善につながります。また、このシステムは、部品のサプライビジネスの際の強力な武器になります。

サプライ事業は、その規模が拡大すればするほど、互換機メーカーと競合してきますが、このような分かりやすい部品検索と発注システムを顧客に展開しておけば、顧客を囲い込むことができます。こうして、3D データを活用した DX の世界が広がっていくのです。

ユーザーの裾野の拡大を見据え、強化しているのが、XVL Web3D の VR/AR 対応です。お手軽なものとしては、スマホの立体視用の眼鏡を利用して、スマホを介して立体的に見ることができます。また、タブレットのジャイロセンサーと連動させることで、タブレットの動きに追従するように 3D の表示状態を変えていくこともできます。大きな製品を小さなタブレット画面で確認したい場合には便利です。

さらに、ヘッドマウントディスプレイをかぶって、本格的な VR 表示をすることで、サービス手順の訓練をしたり、AR で現物とタブレットを重ねて、パーツ情報やサービス手順を確認する機能も順次市場に投入し、各社の DX を加速させていく計画です。VR/AR に関しては第六回コラムでも紹介しました。

体で感じるサービスドキュメント:タブレット上の簡易 VR
体で感じるサービスドキュメント:タブレット上の簡易 VR

● 3D カタログで建築業界の DX を推進する

With コロナの時代が長引くほど、非対面のビジネススタイルが重要になってきます。注目されているのが、3D を利用した営業スタイルです。ここでは、3D カタログ.com を展開する福井コンピュータアーキテクト株式会社https://archi.fukuicompu.co.jp/の取り組みを紹介しましょう。

家を建てる際には、施主と、家を建てる住宅メーカーと、そこにキッチンやお風呂を納める建材メーカーの三者が登場します。3D カタログ.com はこの三者をマッチングさせ、それぞれにビジネスメリットと顧客メリットを提供しようという取り組みです。その中核に XVL Web3D 技術を採用し、家の 3D モデルも各種の建材も XVL 化し流通させることで、建築業界に 3D プラットフォームを提供しています。

それぞれのメリットを見ていきましょう。全国の工務店など住宅メーカーに広く普及する同社の 3D 建築 CAD、『ARCHITREND ZERO』 など ARCHITREND シリーズは、設計された家のモデルを XVL で入出力することができます。このため、住宅メーカーは、3D の建材カタログを参照し、自社物件にマッチする建材を選択し、それを自社の設計に取り込み、完成イメージを確認することができます。施主は、設計された自分の家を自宅に居ながらスマホで確認することができますし、そこに各社の建材を取り込み、組み合わせて表示することも可能です。

最後に建材メーカーは、実機を準備することなく、多様な商品を安価に 3D で紹介することができます。しかも、顧客となりうる住宅メーカーと施主の両方に分かりやすく表示することができるのです。

福井コンピュータアーキテクトの 3D カタログ.com
福井コンピュータアーキテクト社の 3D カタログ.com

● 営業スタイルの変革を実現する XVL Web3D

XVL Web3D の表示品質は年々向上しており、タブレットやスマホ上でも、高い品質の表示が可能になっています。3D カタログ.com を利用すれば、家の外装、屋根、デッキなどの色や材質も簡単に変更し、多数の組み合わせから自分の好みに合うものを選ぶことができます。建材も、たとえば、システムキッチンを指定し、コンロやレンジフード、水栓金具などさまざまなバリエーションを選択し、それらに適したキッチンの色を選び、Web 上で 3D 体験することができます。

これまで住宅展示場に行かないと体験できなかったことを自宅で、しかも、様々なメーカーの様々な商品の様々な組み合わせを 3D 体験できるようなっているのです。まさに、Web 上に無限の広さをもった 3D ショールームが展開されていることのです。

3Dショールーム
3D ショールーム

この事例を見ると、製造業の多くの分野で同様のビジネスの可能性があることに気付くでしょう。ネット会議経由で営業マンが 3D で複数の商品を説明し、お客様は複数の 3D 体験から好みのものを選ぶといった非対面営業スタイル、あるいは、異なる業界の商品をつなぐ 3D プラットフォームなど多様な DX のヒントがここにあるのです。この 3D カタログ.com 立上げの経緯は、福井コンピュータアーキテクト社と実施した SPECIAL 対談(記事)を参照ください。

2020年 9月に菅政権が誕生し、デジタル庁創設を推進するなど、国も本気で DX に取り組もうとしています。新型コロナが社会の弱みをついてくるなら、私達は弱みを強みに変えていく必要があります。国が 「紙とハンコの文化」 を変えていこうとする今、製造業は 「現地現物と図面の文化」 を変えていくタイミングでしょう。

その解決策として提示してきたのが、現地現物を置き換える 「デジタル摺り合わせ」 であり、紙図面に代わるデジタル情報で現場力を高めることです。今回は、設計情報を 3D デジタルツインで流通させることで、サービスや営業分野まで 3D で DX を推進できることを紹介しました。

今回のお話はここまで。次回は 3D デジタルツインを実物のように稼働させることで現地現物を置き換える手法を紹介しましょう。

(関連 XVL 情報)
・XVL Web Master:紹介ページ(サイト内ページにリンクします)
・CATALOGCreator:紹介ページ(外部サイトにリンクします)
・XVL Web3D Manager:紹介ページ(サイト内ページにリンクします)
・3D カタログ.com:紹介ページ(外部サイトにリンクします)
・ARCHITREND ZERO:紹介ページ(外部サイトにリンクします)

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