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コラム|製造業の DX に 3D で貢献する|第十回:XVL Web3D で製造現場の Casual3D に挑戦する

2020年10月1日

第十回:XVL Web3D で製造現場の Casual3D に挑戦する

執筆:ラティス・テクノロジー株式会社 代表取締役社長 鳥谷 浩志

新型コロナ対応で欧州各国が大規模なロックダウン(都市封鎖)をした中、集団免疫の獲得を優先するという異色の対応したのがスウェーデンでした。幼稚園や小学校を休校せず、店舗営業を続けたこともあってか、4~5月は高齢者の死者数が増え、一時は大きな非難を浴びました。ところが、8月に入って、スウェーデンの 100万人あたりの死者の数は厳しいロックダウンをした英国を下回っているということです。一方、ロックダウンをした各国では、観光・飲食業はじめ経済への深刻なダメージ、教育への悪影響など副作用も目立っています。経済と命の両立という視点で、正解が何だったのかまだ判断できませんが、スウェーデン政府のアナウンスにある 「感染対策で我々が求めるのはあくまで身体的な距離であり、人々が社会的に距離をとることではない。語り合い、支え合い、解決すべきだ」 というコメントは傾聴すべきでしょう。コロナ禍にあっても、社会的距離は縮めるべきなのです。今回は、3D で社会的距離を縮め、DX の前に横たわる課題を解決する XVL Web3D を紹介しましょう。

● ものづくり白書が明らかにした不都合な真実

With コロナの時代が長引く中、3密を避ける手段として、デジタル化とその先の DX が必須のものだと叫ばれています。にもかかわらず、2020年度のものづくり白書に非常にショッキングなグラフがありました。下図の向かって左のグラフは、44.3% の会社が 3D 設計後 2D データを作成していることを示しています。右のグラフを見ると、3D CAD で設計しても、協力会社に 3D データを渡して仕事をしている人は 15.7% しかいません。しかも、DX の時代に、半数以上の 54.3% の会社が紙で協力会社へ情報伝達をしていることが分かります。

3D CAD はどこまで広かったのか?
3D CAD はどこまで広かったのか?

このことから類推される日本の典型的な会社の仕事の風景は、3D CAD で設計した後、2D CAD で図面を作成しそれをベースに試作し、それを現物で評価した後、紙で指示書を作成し製造に流すという DX の真逆をいく情報分断のプロセスです。その結果、現場では何が起こるでしょうか。

第一に現物と紙を待ってからの作業となって納期短縮できません。第二に現物と紙図面を見てから課題が発見されて、手戻りが大きくなります。第三に随所でデータの再入力があるため間違いが混入し、不正確かつ不整合な情報が流通していきます。もちろん、データの再入力というのはムダ以外の何物でもありません。これが典型的な風景だとしたら、「中国製造2025」 を旗印に加速する中国製造業、2D CAD を飛ばして、いきなり 3D CAD だけで設計する中国に対抗していけるのでしょうか。

Casual3D:いつでも、どこでも、誰でも 3D 活用
Casual3D:いつでも、どこでも、誰でも 3D 活用

● DX の起点、図面レスに挑戦する

そのような問題意識からラティスでは、図面をなくす方法として XVL Web3D Manager(XVL Web3D)の開発を行ってきました。実装した機能は、以下の 3点です。

  1. CAD で定義した寸法や注記を 3D 形状情報とともに現場に正確に伝えること
  2. 現場の低スペックの PC や多様なタブレット上で 3D 形状とともに表示可能にすること
  3. 不足する情報を断面、計測により現場で手軽に得られるようにすること

こうして CAD から XVL を生成して、関係者に流通させれば、図面作成の手間をなくすことができます。必要な情報は現場で得ることもできますから、CAD 寸法や注記情報を設定するという作業量は、設計ルールを適切に設定すれば、最小化できるでしょう。下記のボタンクリックすると実際に XVL Web3D を体験することができます。実際にタブレット上で断面を表示し、寸法が計測できることが分かります。

タブレット 3D で、図面レスを推進 ~ 3D 組立図
見る

(ブラウザが開きます)

タブレット 3D で、図面レスを推進 ~ 3D 組立図

XVL Web3D では、寸法を精密に計測することができます。これは通常の Web ベースの 3D 表示ソフトにはない特徴です。ここでその秘密の種明かしをしておきましょう。

通常のソフトはポリゴンという平面で曲面を近似する手法を用いています。したがって、計測してもラフな値しか得られません。しかし、XVL は曲面形状を持っています。XVL Web3D では、サーバー上に曲面データを置き、計測時にタブレットから正確な値を問い合わせる仕組みを持っています。ゲームのように表示するだけであればポリゴンでも十分でしょう。しかし、エンジニアリングのように正確な計測が必要でかつ 3D を軽快に動かしたい場合には、XVL の強みが存分に生きるのです。

● 金型分野で先行する図面レスの現場

では、図面レスの実際はどうなっているのでしょうか。実は、図面レスの取り組みは金型業界で先行しており、十年以上前から定着しています。金型業界は企業規模が比較的小さくトップダウンで一気に進めやすいこと、3D 形状があれば大半の製造業務が進められること、CAD のアセンブリ構造を見ながら組付け作業も現場主体で進めやすいこと等が要因でしょう。

ここでは超短納期をキーワードで製造現場のデジタル化を進めてきた株式会社ツバメックス 様(以下、ツバメックス社、本社:新潟県燕市、ホームページ:http://www.tsubamex.co.jp/)の現場のビデオを紹介しましょう。なお、このビデオでは XVL Web3D の一世代前の技術を利用しています。

ツバメックス社からお話を伺って面白かったのは、図面レスの取り組みが設計部門にも大きなメリットをもたらしたことです。3D で分かりやすく情報が流通したこと、必要な情報を現場で計測できることから、現場から設計部署への問い合わせの数が激減したのです。この結果、設計は本来の業務に専念できる時間が大幅に増えました。この詳細については、かつて、日経クロステックの連載(外部サイトにリンク)でも紹介しました。設計部門に負荷のかかる 3D デジタルツインの整備を推進する上で、逆に、設計が楽になったという話は実際の業務改革を進める上で、大きなヒントになるでしょう。

● 作業指示への適用

では、製造への作業指示の分野ではどうでしょうか。作業指示書を作成する前に、CAD から変換された XVL に組立手順を定義していきます。組付時に部品が干渉しないか、作業性はどうかといったことを 3D で検証しながら、正しい組立手順を定義していきます。最近では、第四回コラムで紹介した VR を利用して実際に作業者に体験させて検証するという取り組みも始まっています。この次が作業指示ソリューションの出番です。これは 10年以上前に開発されたもので、すでに成熟したものです。

文字による注記や画像による注記、組付け方向の矢印による指示、3D アニメーションによる分かりやすい表示、組付工程や利用する部品名称・治工具、注意点などの情報と 3D 形状との連動など作業指示に必要な機能を提供してきました。PC 環境で長らく利用されてきたこれらの機能が、XVL Web3D によって、多様なタブレット上でも利用できるようになりました。下のボタンクリックすると体験できますから、是非、実物をご覧ください。

タブレット 3D で、図面レスを推進 ~ 3D 組立図
見る

(ブラウザが開きます)

タブレット 3D で、図面レスを推進 ~ 3D 組立指示

ここで、注目いただきたいのは、作業指示に必要なすべての情報が XVL の中に統合されているということです。設計の作成した 3D デジタルツインが、生技や製造で情報付加することで進化し、その情報が組織の間を流れているということです。

DX の本質は情報の流れを創ること、まさに、それを実現しているのです。XVL にすべての情報が入っているのであれば、それを PDF でも Excel でも Web でも、どんな環境でも 3D 活用可能になります。IT 環境の進化に伴い、今では、この XVL を VR や AR で表示することもできますし、5G 時代を迎えタブレットでもスマホでも、実機と同等の 3D モデル見ることができるようになってくるのです。

● 3D 真の Casual3D の時代へ

XVL ユーザーにはお馴染みのスナップショットという機能をご存じでしょうか? 写真のスナップショットは時間という切り口で過去の一瞬を固定するものです。XVL のスナップショットは、空間という切り口で 3D の表示状態の一瞬を固定します。つまり、表示方向や縮尺、組付け状態やどの部品をどこに表示するか、見せたい状態を 3D で分かりやすく固定し、再現できるようにしたものです。

軽量な XVL ではそれを数千も持つことができるので、3D 活用の幅は劇的に広がります。見せたい場面をあらかじめ仕込んでおくことができるからです。しかし、一方でその定義は面倒です。つまり、見る人が少なければ、かかる手間の方が大きく、投資対効果を十分得られません

ところが今、XVL Web3D という技術によって、定義したスナップショットを数千人、数万人が利用できるようになりました。利用者数が桁違いになれば、手間暇かけてでもデータを作り込むことが、圧倒的な生産性向上を実現します。

劇的な変化を起こす点をティッピングポイントと呼びます。利用者の裾野が拡大したことで、3D 活用がこのティッピングポイントを超えようとしているのです。前回、「だれでもいつでもどこでも 3D」 を実現する Casual3D の考え方を紹介しました。ユーザー数が社内から社外へと劇的に増え、3D の効用が果てしなく広がり始めたのです。

「社会的距離を縮め、語り合い、支え合い、解決すべき」 というスウェーデン政府の考え方は、経済を止めず感染症になんとか対抗しようというものでした。本連載の中で説明してきたことは、分かりやすい 3D 情報に豊かな情報を付加し、それを共有しながら語り合い・支え合うことが 「デジタル擦り合わせ」 であり、支え合い・解決していくのが 「デジタル現場力」 とも総括できるでしょう。XVL Web3D という技術の誕生で、豊かな 3D 情報を膨大な人々が利用できるようになり、人々の間の社会的距離が縮まり、現場力を大きく引き出すことが可能になったのです。

今回のお話はここまで。次回は、この技術を使った社外での 3D 活用を考えてみましょう。

(関連 XVL 情報)
・XVL Web3D Manager:紹介ページ(サイト内ページにリンクします)
・3D デジタルツイン:紹介ページ(サイト内ページにリンクします)

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