ニュース

ラティス・テクノロジーから発信する情報

お知らせ

SPECIAL 対談|イエイリ・ラボ × ラティス・テクノロジー

2021年2月9日

2021年
2月

「一歩先の視点」 で考える建築業 × 製造業 DX
鍵は “思いやり” にあり!

建設 IT ジャーナリストの株式会社イエイリ・ラボ 代表取締役 家入 龍太 様と弊社代表取締役社長 鳥谷の対談の様子をお届けいたします。

※ 今回はそれぞれが異なるロケーションから Web 対談を実施しました。


イエイリラボ × ラティス・テクノロジー

鳥谷:
本日は貴重なお時間をありがとうございます。家入さんといえば、建設 IT 唯一のジャーナリストとして有名ですが、まずは簡単に自己紹介をお願いします。

家入:
私は、建設 IT ワールド(ホームページ:https://ken-it.world/)という情報ポータルを 2011年4月に立ち上げ、そこで情報を発信しているジャーナリストです。元々は日経 BP で建設関連の記事や、広告に 20年携わっていて、その後、独立しました。建設 IT ワールドでは、“一歩先の視点” をモットーに、建設業の抱える経営課題を解決するための IT 情報を日々、発信しています。

鳥谷:
建設 IT ワールドも、もう十年になるのですね。未来志向の建築業界の取り組みを、いつも楽しく読ませて頂いております。さて本日は DX というテーマで建築業、製造業の現状と未来を、両者を対比しながら、お話しできればと考えております。まずは建築業での DX 化の状況を教えていただけますか。

家入:
今回のコロナの影響で、半ば強制的ではありますが、DX 化、IT への理解が進んだと感じています。Web 会議なんかは、非常にわかりやすい形で、簡単にコスト削減ができるという IT の効果を示したと思います。

BIM(Building Information Modeling)/CIM(Construction Information Modeling)の利用のすそ野が広がってきており、現場に行かなくてもわかることが増えています。これから日本の生産者人口が減っていくのは確実なわけで、ロボットや AI を最大限活用して効率を上げることは必須です。またコロナで三密防止という観点からも IT を活用することは非常に有効です。

今、政府が 7割出勤減を唱えていますが、極端な話、10人で行っていた現場での仕事を、現場は 3人でやるということなので、物理的に考えると不可能な話なのです。ここでも IT 活用をして、現場は 3人だけど、その前の組み立ては分散して、工場で行ったりして、離れた場所から密にならないように支援するということが可能になりつつあります。

鳥谷:
BIM/CIM という言葉が出てきましたが、製造業で言えば、PLM に当たるものでしょうが、簡単に BIM/CIM を教えてもらえますか。

家入:
BIMが 建築系、CIM が土木系、もう少しかみ砕いて説明すると BIM は人が中で過ごす建物、一方 CIM は橋やトンネルなど人が住まない構造物に関して 3D で情報共有を行い、生産性の向上を図るものです。

鳥谷:
となると、製造業に近しい関係にあるのは BIM ということになると思うのですが、BIM はどういう状況にありますか。

家入:
企業によって差がありますが、既にゼネコンは長年取り組んできており、技術も熟成されてきています。その一方で、取り組んで 2、3年とか、これから取り組むという企業も少なからずあります。そういった後発組は、先人のノウハウや、熟成された技術を基に進めることができるので、ショートカットしながら、DX に取り組んでいます。

鳥谷:
まさに、先進事例に学ぶアーリー・マジョリティというキャズムの理論を実地でいっているわけですね。

家入:
当初は BIM/CIM を導入することが目的となっていることも少なくなかったと感じていました。しかし、ここ最近では、生産性を上げて儲けるために導入するという企業が増えています。中小クラスの会社でも、一人 3D に強い人材がいると、3D を使ってのデジタルシフトが急激に進み、一気に仕事のスピードが上がり、これまで儲からなかった仕事が儲かる仕事になったりしています。

鳥谷:
DX の前に、まず目的ありきが重要ですよね。そういったあるべき姿の事例を取り上げ、建設 DX での良き流れを促進しているのが、家入さんの建設 IT ワールドですね。

家入:
まさに、それを狙っています。

鳥谷:
製造業でも、3D CAD を活用した設計が進んできていますが、製造現場は、図面が未だ中心となっていることが少なくありません。BIM/CIMが 進む中、やはり図面は残っているのでしょうか。

家入:
はい、図面は残っています。現場でどこに壁や風呂をつくるのかというのを、実際の構造物に職人が線を引く墨出しという作業を行います。職人は図面を基に、頭の中で立面、平面、断面を組立てているので、図面は必要不可欠なのです。とはいえ、現場に外国の方なども入ってきており、これまでのように図面を起点にしてすべての作業を行うということが、逆に難しくなってくると思います。そうなると図面が減り、3D が増えてくると思います。

鳥谷:
ラティスは実機を代替するシミュレーションや、実機を使わないデジタル検証を、製品と一対一に対応する 3D モデル上で行うという “3D デジタルツイン”(参考:コラム.02を提唱しています。そういった製品と同等のデジタルモデルがあれば、後工程との擦り合わせも実機完成前にデジタルで可能になります。その結果を設計にフィードバックして、フロントローディングを実現することができます。設計にフィードバックというのがポイントで、それがなければ革新には繋がらないと感じています。

家入:
最近取り上げた事例だと、落合陽一氏が代表取締役を務めるピクシーダストテクノロジーズさんが鹿島さんと組んでデジタルツイン基盤を構築しました。3D レーザスキャナーで点群を取り、BIM モデルを重ね合わせてデジタルツインを再現しながら、日々の変化点を把握し、工事の進捗管理を行っています。*1

鳥谷:
あの落合陽一氏と鹿島さんが組んでの最先端の事例だけに、スケールが大きいですね。10年前は、建築業での 3D の適用領域は、実際の業務の中でというより、見栄えの良さが向上するのでプレゼンテーションで利用するというイメージが強かったのですが、隔世の感があります。

家入:
干渉やものの取りあいをシミュレーションするのに 3D を活用するということは、建築業でだいぶ広がってきました。大きな構造物をクレーンで吊って降ろすというような作業が多々ありますが、他の部材に引っ掛かるようなケースも少なからずあり、発生すると大問題となります。そういったことが現場で発生しないように、事前に 3D でシミュレーションを行っています。

しかし、実際の運用としては BIM モデルを準備するのにも多大なコストがかかるということで、例えば鉄筋が入り組んでいるような複雑な基盤だけを BIM で表現しシミュレーションを行っていました。しかし最近では、BIM モデルを機械やロボットに理解させ、建設作業を省力化する事例が出てきており、そのために BIM を作るという流れも出てきました。

鳥谷:
非常に面白いお話しですね。製造業でいう CAM と同じ発想ですね。製造業で起こっていることが、建築業でも起きているのですね。

家入:
これまで建築業は一品生産という色合いが濃かったのですが、効率化を目指すと、どんどん製造業に近づいていくと思います。建物のモジュール化を行ない、モジュールの組立は工場で実施し、現場での組立作業をできるだけ簡素にする。製造業における、トヨタさんのモノづくりですね。

鳥谷:
建築では、一企業で請け負うことのできない大規模な工事・事業を請け負う際に、各分野に秀でた企業同士が結成するジョイントベンチャーという形態がありますが、その辺りでは、いかがでしょうか。

家入:
ジョイントベンチャーを組む際には、当然同じ規格で仕事を進めたほうが、効率が良いので、同じソフトを利用し、柱や梁の書き方を統一したりします。今後は水平方向の同業間での規格の統一だけではなく、垂直方向、サブコンや、建材メーカーなども巻き込んでソフトや規格の統一を行っていけるかが重要だと思っています。これも、まさにトヨタさんが、グループ間の情報共有を XVL で行っているイメージですね。

鳥谷:
有難うございます。「だれでもいつでもどこでも 3D」 を実現する Casual3D(参考:コラム.09ということで、超軽量 3D XVL で、XVL パイプライン(参考:コラム.07を通じての全社での 3D の流通、また社外との 3D の流通を目指しています。先駆的なトヨタさんでの XVL 活用事例は、私たちのランドマーク的存在です。

家入:
建築業においては、各建築のプロセスで必要な情報が異なります。ゼネコンであれば、外観や、壁、床といった大きなレベルの情報。逆に後工程では材質や、色といった細かいレベルの情報が求められます。使う場面によっては、形の正確さは必ずしも求められてないこともあります。お互いが必要な情報を認識して、入力していくという思いやりが必要になってくると思います。

現状では、元請けと下請けが連携して、川上から川下までデータを共有している例は少ないです。しかし今後は下請けが必要な情報を元請けが入力してという、“思いやり” の気持ちが必要です。そういう思いやり、相互理解がなければ BIM の発展は考えられません。

鳥谷:
言わば “思いやりの BIM”!素晴らしいキーワードですね。製造業でも全く同じことが言えます。設計と製造では必要な情報が異なりますし、取引先との間も然りです。全体最適となるために誰が、どのタイミングで、情報を入れるか、お互い理解し、思いやってというのは 3D を活用して変革ができるか、できないか重要なターニングポイントとなっています。

家入:
まさしく情けは人のためならずというところですね。

鳥谷:
さきほど少しお話したように、製造業では 3D の活用範囲が広がっています。最近では、我々のお客様では、サービス領域(参考:コラム.11にまで 3D を展開、タブレットや、スマホといったモバイル端末から 3D で作業の詳細や部品を確認し、作業を行うという流れが広がってきています。

家入:
面白い話ですね。建設業でも利用できそうです。そのあたりも規格化されると、より展開のスピードが速まりそうですね。先ほどから “思いやり” ということを言わせてもらっていますが、このコロナ禍の殺伐としがちな世の中においては、より一層大切なことだと思っています。最近頻繁に目にする機会が増えている SDGs(持続可能な開発目標)の根底にも “思いやり” という考えた方があると理解しています。

鳥谷:
異業種間での BIM データの流通はいかがでしょうか。

家入:
10年前から BIM は提唱されていますが、BIM1.0 では 3D で表現、2.0 では作ったものの応力や流体の解析といったシミュレーションを実施。第三世代の 3.0 では企業間や異業種間での 3D の流通ということになります。同業者間や設計事務所から建設事務所といったデータの流れはあるのですが、今後は、工場や異業種とのデータ連携が必要になってきます。

そうなってくると、ArchiCAD や Revit といった建築系 CAD と、SOLIDWORKS や Inventor といった製造系の CAD との間でデータ交換が難しいのは、大きな障壁になっています。先日事例で取り上げた図研さんの事例のように、XVL でハーネスや、製品、設備等工場全体をデジタルツインで表現するというのは、一つの解だと思います。最近ミスミさんの Meviy というサービスが製造業で広がってきており、世の中で注目を集めているのですが、こういったサービスを建築業でも利用できるようにしたいですね。

鳥谷:
ラティスも XVL が異業種コラボレーションに貢献できると考えており、たとえば、東芝エレベータさん(参考:2017年5月9日プレスリリースでは、BIM と PLM の連携を XVL で実現されています。また、建材メーカーの LIXIL さんや TOTO さんも XVL のビッグユーザーです。ところで、最近、製造業では DX がキーワードとなっていますが、建設業ではいかがでしょうか。

家入:
建設業でも同様に、DX はキーワードとなっています。これまで IT を活用し改善を図り、数パーセント単位で生産性を向上させてきました。しかし DX で目指すところは、改善ではなく革新であり、2倍や 3倍と今までとは桁違いの生産性向上です。今までの延長線上では、実現できません。これまでの仕事のやり方、プロセスを見直し、3D を使った新しいワークフローを構築していくことが重要だと思います。

鳥谷:
何か面白い事例はありますか。

家入:
スターツ CAM さんでは、CNC 加工機で、BIM モデルを取り込んで、材料のロールから、コの字に鉄筋を曲げるところまで自動加工を行います。これまで鉄筋を作るには、手作業で非常に手間がかかっていました。

鳥谷:
先ほどお話されていた機械に BIM を読み込ませてというお話の事例ですね。海外での BIM の普及状況はいかがでしょうか。

家入:
私の知っているところでいうと、シンガポールは、政府が BIM/CIM を推進しており非常に進んでいます。日本のゼネコンの支店もあるのですが、日本の本社とも連携しながら、そういった最先端の BIM の領域で戦っています。

鳥谷:
最後にお聞きしたいのですが、アフターコロナ時代の建設 IT はどうなっていく考えていますか。

家入:
先ほどの DX の話と相通ずるところなのですが、手作り、アナログに頼っていると、小幅な改善の範疇を超えられません。2倍、3倍の効率を上げるために巨大ロボットを使ったり、AI を使ったりダイナミックな変革を行うことが求められていくと思っています。建築業を、若い人が夢をもって働きたいという業界にしていくことも必要だと思います。そのためにも、私は建設 IT ワールドで情報発信を続けていきたいと思っています。

鳥谷:
今日は、お忙しい中、リモートで対談の時間を頂きありがとうございました。思っていた以上に製造業、建設業には共通点があるということがわかりました。これからも製造業、建築業の情報交換を通じて、それぞれの業界の DX がより洗練されていくように情報発信を続けていきましょう。

家入:
こちらこそよろしくお願いします。

END

・XVL はラティス・テクノロジー株式会社の登録商標です。
・その他記載されている会社名および製品名は各社の登録商標または商標です。

(参考情報)
*1 落合陽一氏と鹿島が建設現場をデジタルツイン化! BIM とセンサーで工程管理(建設 IT ワールド)
*2 配線 CAD 世界ナンバーワン! 図研が狙う建築設備のデジタルツイン化戦略(建設 IT ワールド)
*3 スターツ CAM が BIM で鉄筋を自動加工! 日本初のコイル鉄筋を使用(建設 IT ワールド)
*4 国を丸ごと BIM 化!バーチャル・シンガポール計画が進行中(建設 IT ワールド)

最新の XVL 関連情報をお届けする XVL メルマガを配信しています!


その他の SPECIAL 対談記事こちらから

SPECIAL 対談|
「一歩先の視点」 で考える建築業 × 製造業 DX、鍵は “思いやり” にあり!