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SPECIAL 対談|LIXIL × ラティス・テクノロジー
2021年7月1日
2021年
7月
リアルを超える顧客体験を創造、
LIXIL オンラインショールームで実現した DX × 3D
今回の SPECIAL 対談では、XVL 3次元ものづくり支援セミナー2019 で 「LIXIL が目指す DX ~ 3D で魅せる提案見積システムの開発事例紹介」 と題して事例をご講演いただいた、株式会社LIXIL デジタル部門 システム開発運用統括部 開発2部 リーダー 慶野 知治 様に、更に進化した 見積・シミュレーションシステムと、2020年4月の緊急時宣言発令から約 1か月という短期間で立ち上げた 「LIXIL オンラインショールーム」 について、ラティス・テクノロジー株式会社 代表取締役社長 鳥谷 浩志(プロフィール)がオンラインでお話しをうかがいました。
20年を経て今、3D はブームでなく当たり前に。
鳥谷:
本日はお忙しいところ、お時間をいただき有難うございます。
慶野:
こちらこそお声がけいただきありがとうございます。光栄です。
鳥谷:
トイレ、お風呂、キッチンから窓、ドア、インテリア、エクステリアなど建材・住宅設備の会社が統合されて最大手となった株式会社LIXIL(以下、LIXIL)は誰もがご存じでしょう。まずは、自己紹介からお願いします。
慶野:
私は、1996年トステムに入社し、情報システム部門で仕事を始めました。その後、会社統合も経験してきましたが、一貫して情報システム部門におり、PLM システムや、提案見積システムの領域に携わりました。現在は、SOE 領域(System of Engagement)のシステムに責任を負っています。
鳥谷:
昨今、非常に大切と言われている CX(Customer Experience)を向上させる上での重要なポジションですね。慶野さんとは長いお付き合いになりますが、最初にお会いしてから、もう 20年になるでしょうか。
慶野:
はい。2000年頃、キッチンを Web で 3D 配信できないかというテーマに関し、ラティスさんに相談し、教えていただいたのが初めての出会いでした。同僚とともに、Web3D に関して指導いただきながら、その場でコンテンツを作っていました。
鳥谷:
懐かしいですね。システムキッチンの 3D モデルのドアを開閉するアニメーションを仕込んだり、素材の色や材質を変えたりといった Web3D コンテンツを作成していただきました。今思えば、これは、この後お話しいただく 「見積・シミュレーション システム」 の原型でしたね。
慶野:
はい、まさしくです。3D を使って、よりわかりやすく商品をお伝えし、お客様に喜んでいただきたいという発想から始まりました。当時は商品のバリエーションなども考慮されておらず、まだまだシンプルなものでしたが、今日に至るまで、日々進化させてきました。
鳥谷:
2000年ごろには、インターネット勃興期で、ちょうど Web3D のブームが来ていましたよね。
慶野:
そうなんです。我々もそのタイミングで飛びついた口です。あの時は “Cult3D“ や “Viewpoint” などなど、たくさん選択肢がありましたが、今となって生き残っているのは XVL だけですね。
鳥谷:
良い選択をされましたね(笑)。
当時は、ネットワーク環境も、今のように整備されておらず、3D を配信することは容量的にも難しく、また、各社とも収益を上げるビジネスモデルも確立できずにブームで終わってしまいました。
20年たって、ようやく時代が私たちの発想に追いついたと思うと感慨深いですね。
慶野:
まさしくです!
鳥谷:
慶野さんには、2019年の弊社セミナー*でもキッチンやトイレなどの 3D を利用した 「見積・シミュレーション システム」 についてご講演いただきましたが、改めて簡単にご説明いただけますか。
*参考|XVL3次元モノづくり支援セミナー2019|LIXIL が目指す DX~ 3D で魅せる提案見積システムの開発事例紹介|講演概要
慶野:
見積・シミュレーション システムは、ショールームで、お客様に、自社商品を提案する際に、その場で商品の設置イメージや見積額を提示するものです。
商品を選ぶだけで、それらを実際に配置した際の3Dのイメージがブラウザ上で確認でき、提案の質が向上し、お客様の満足度とともに成約率もアップしました。システムの中核部分において、XVLを採用して、クライアント環境に依存せず、ブラウザ上で見られるように実装しました。
鳥谷:
セミナーでも拝見しましたが、お客様の立場で見た際、3D を使った非常にわかりやすいシステムだと感じました。構築する上では二つのポイントがあったと記憶しています。
一つは商品のバリエーションを管理するためのコンフィギュレーションの仕組み、もう一つはそれに応じた 3D モデルをパラメトリックに再現する仕組みです。正しいでしょうか?
慶野:
その通りです。1つ目が、膨大な数になる商品の組み合わせの規則を整理しました。たとえば、A という商品と、B という商品は組み合わせられないといった禁則処理や、C という商品にはどのオプションが追加できるのかということを厳密に定め、定義していきました。
2つ目のポイントは、XVL で作っていただいたパラメトリックの機構を用いた 3D の動的な変更です。弊社の商品には、同じ形状でサイズ違いというタイプのバリエーションが多いのが特徴です。パラメトリックの機構を用いて、お客様の家のサイズに合う商品の大きさに、3D で動的に変更し、表現するということが非常に重要でした。
商品の組み合わせだけでも何百万通りもあり、そこに配置という要素を組み合わせると無限とも言ってよいほどの組み合わせになってしまい、通常表現することは、まず不可能です。しかしコンフィギュレーションと、パラメトリックのお陰で表現できるようになりました。
鳥谷:
2000年には、すでに Web でキッチンを 3D 表示できることを証明しました。しかし、それだけでは実務を変えることができませんでした。お客様の希望するあらゆる商品を正しく 3D で再現するという仕組みを構築することができて、ようやく、実用化されたわけですね。
世間では、これを DX(デジタルトランスフォーメーション)と呼んでいます。適用される商品の数も増えてきたのでしょうか?
慶野:
まさに DX に至るまでの道のりが大変でした。それが、今では、キッチン、トイレ、トイレ空間、洗面化粧台、そして、浴室への展開も始めており、見積・シミュレーション システムでの自社商品のカバー率は向上しております。
鳥谷:
素晴らしいですね。見積・シミュレーション システムが出来る前は、どのように仕事をされていたのですか?
慶野:
ショールームに来場いただいたお客様に対して、見積書、図面、提案書の 3点セットを作成して、後日郵送しておりました。
お客様としては、良い!と思ったその場で情報が出揃わないわけで、次に話をした際には、熱が冷めてしまっていたということも往々にしてありました。
鳥谷:
どんなものを売るにしても、お客様の熱を冷まさないうちにというのは、営業の鉄則ですものね。
慶野:
見積・シミュレーション システムでは、様々な商品やオプション類を選択すると、3D のイメージが画面の左側に即座に表示されると同時に、それらを合計した見積額も、その場で提示できるようになりました。
お客様は、自身の要望を可視化して、その場で見られるようになりました。3D 上で、色々組み合わせて行く中で、自身も部屋を一緒に作っているという体験をしてもらいます。お客様が熱を持っている中で、商談を進められることから、非常に評判が良いです。
コロナ禍で立ち上げた 「LIXIL オンラインショールーム」
鳥谷:
このコロナ禍で企業の業績が二極化していると言われておりますが、LIXIL さんはいかがですか。
慶野:
コロナ禍での非対面接客を行う仕組みを整えたことも寄与して、2021年 3月期は対前年で増益となっております。
鳥谷:
非対面接客というのは、具体的にどのような施策をされたのですか?
慶野:
端的に申し上げると、オンラインショールームを開設しました。
昨年 4月の緊急事態宣言発令に伴い、ショールームの入館や対面での館内サービスを停止するという判断をしました。それに伴い、スマホ・パソコン・タブレットの画面を通して、ユーザがショールームコーディネーターと直接相談できる 「LIXIL オンラインショールーム」* を 2020年5月から開始しました。
*LIXIL オンラインショールーム|サイト
鳥谷:
それはまた、えらく短い期間でスタートできましたね!
慶野:
弊社の金澤祐悟 CDO 専務役員が自宅の新築時にキッチン購入を検討し、実際に見積・シミュレーション システムや既存のデジタルツールを使って、試験的にオンラインでスタッフと検討を進めたそうなんですね。
検討する中で、必要な寸法をその場で測れたり、小さな子供がいても、目の届く範囲で遊ばせておけたり、といったようなメリットを体感し、キッチン購入の検討も進められたリアルな経験があり、これはやるべきという判断になりました。
鳥谷:
それは面白い話ですね。コロナ禍で営業 DX が強制的に加速したのですね。どれぐらいの人数が利用されているのでしょうか。
慶野:
2020年5月の開設から 2021年4月までで累計 14,000組の方に利用いただきました。
鳥谷:
1年ですごい人数の方が利用されているのですね!オンラインショールームの評判はいかがでしょうか。
慶野:
大変ありがたいことに、非常に好評で実際のショールームよりも高いお客様の満足度を得ています。
鳥谷:
どのようなところがお客様の心をとらえているのでしょうか?
慶野:
いくつかポイントがありますが、一番根源的なポイントは、わざわざショールームに出かけなくて、アクセスできる点です。
弊社では、全国に 85拠点の LIXIL ショールームを開設しているのですが、地理的な制約から、地方ではアクセスすることが難しいというお客様もたくさんおられました。またショールームにご来場いただいたものの、気に入ったその商品が、家のスペースに収まるか、どうかわからないということが良くありました。
先ほど少し触れましたが、オンラインショールームだと自宅にいるわけですから、その場で寸法を測り、収まるかどうか判断できます。オンラインショールームは、ショールーム閉館後の夜の時間帯もご利用いただけるようになっており、共働き世帯に好評です。実際、利用者の 2割以上が夜間にご利用いただいております。
鳥谷:
まさに、リアルに加えバーチャルな販売方法を提供し、それがお客様にも、これまでできなかった利便性を提供しているということですね。LIXIL さんの売上向上に XVL が貢献できて、嬉しい限りです。
慶野:
そういうことになります。見積システムも、キッチン、トイレ、トイレ空間、洗面化粧台から始まり、今は浴室にまで拡がってきております。
働き方を変える DX × 3D
鳥谷:
それは XVL の開発メーカーとして、モチベーションが高まります。
最近 3D を使った DX ということをお話させていただいているのですが、3D データを使って、ビジネスプロセスを変革されており、慶野さんの取り組みはまさしく、ラティスの目指す “DX x 3D” を現実のものにしたものです。
慶野:
ありがとうございます。見積・シミュレーション システムは、弊社のビジネスの遂行に必要不可欠なシステムとなっており、日々身の引き締まる思いです(笑)。
オンラインショールームに関しては、お客様の評判だけでなく、社内でも評判が良く、働き方改革に繋がっています。
鳥谷:
それは具体的にどのようなところでしょうか。
慶野:
小さなお子様がいるコーディネーター、妊娠したコーディネーターも在宅勤務が可能になり、コロナ禍において、通勤もなく安心して働けるようになったと評判を聞いています。
またオンラインショールームでは、どこに居住しているかは関係ないので、コーディネーターの予約枠も、全国で一本化して、シフトも組めるようになりました。なかには、瀬戸内の島で働いているコーディネーターもいます。
鳥谷:
それは驚きですね。DX で実現すべき成果、つまり、働き方を改革し、お客様の満足度を上げ、収益も上げるということが実現されているわけですね。今後の展望などをおうかがいできますか。
慶野:
リアルのショールームを訪れても、全ての商品、バリエーションがあるわけではないので、再現できるパターンは限られています。一方、バーチャルなオンラインショールームでは、在庫などは関係なく、無数のパターンの再現が可能です。ここまでは実現できました。
デジタル化による生産性改革の推進は、経営の基本的方向性として打ち出されており、オンラインショールームに関しては、コロナに関わらず、ビジネス価値が高いものとして、今後も精度を向上させ、リアルとオンラインの利点を生かしたハイブリッド型サービスを提案していきます。
鳥谷:
具体的にはどのように進化させていかれるのでしょうか。
慶野:
次に目指すのは、レンダリングでの質感の表現を高め、実物の品質に近づけていくことです。またこれからは空間の提案というところをより進めて行きたいです。
鳥谷:
有難うございます。XVL Web3D* の表示品質も年々進化しています。点群** とのより利便性の高い連携も考えていく必要がありますね。
*XVL Web3D|製品情報
、**参考コラム|製造業の DX に 3D で貢献する|第十四回:現地現物を DX に活かす(1)
今後も LIXIL さんの “DX x 3D” を XVL で是非とも支えていきたいと思います。
慶野:
こちらこそ、よろしくお願いします。
鳥谷:
本日は、お忙しい中、楽しいお話をいただきありがとうございました。
・XVL はラティス・テクノロジー株式会社の登録商標です。
・その他記載されている会社名および製品名は各社の登録商標または商標です。
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