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製造業 DX × 3D 成功のヒント|02.ロッキード マーティンに学ぶ DX ~指示書生成自動化の 6要素

2021年9月14日

02.ロッキード マーティンに学ぶ DX ~指示書生成自動化の 6要素

ラティス・テクノロジー株式会社 代表取締役社長 鳥谷 浩志


“The Man Who Saved the World” という映画をご存じでしょうか。1983年9月、米ソ冷戦の緊張が極限に達しようという頃、事件は起きました。ソ連の監視衛星が米国のミサイル発射の警報メッセージを発したのです。スクリーンには最初の1発に続き、4発のミサイルが発射されたというメッセージが出たと言います。このメッセージを見た空軍将校スタニラフ・ペトロフは厳しい判断を迫られます。発射されたミサイルがソ連に向かっているかもしれない、一方、このまま上層部に伝えれば、世界を破滅に追い込む核戦争が始まることになるかもしれない…

明らかになった作業指示書作成自動化に必須な 6要素

さて、今回は今年の7月14日に米国の軍事産業を支えるロッキード マーティンのバーチャル・プロトタイピングのマネージャをお招きし開催したウェビナー* から学んだことを紹介しましょう。
*参考|ラティス・テクノロジー サミット 2021

巨大データを 3D で扱う同社は、実は古くからの XVL ユーザーです。最近同社では、DX(デジタルトランスフォーメーション) の一環で 3D をベースとした作業指示書の自動生成システムを検討しています。その中で XVL による作業指示ソリューションを高く評価していただき、あるべきシステム像を明確にしてくれました。その知見は、これから製造現場の作業指示書プロセスを刷新しようという方々には大変貴重なものです。セミナー内では、作業指示書の自動作成システムの理想を実現する上で必須となる 6つの要素が示されました。

第 1 の要素がステップごとに作業指示書を作り込んでいくということ。これは、まさに XVL の作業指示書ソリューションで実現してきたことです。まず、 XVL VR* 等を利用して 3D モデルや構造、組順の正しさを検証しながら 3D モデルを作り込んでいきます。3D 形状に製造単位や組立順序、作業指示に必要な情報を XVL モデルに付加していくのです。この方法をとることで現在行っている 2D 作業指示書から自然に 3D ベースのプロセスへと移行できるといいます。
*製品情報|XVL VR(XVL Studio VR オプション)

マルチフォーマットによる指示書生成は必須

第 2 が多様なフォーマットで配信できることです。理想は 3D で作業指示書を作り、タブレット配信しペーパーレスを実現することでしょう。しかし、社内には紙や 2D の作業指示が残っているという企業がほとんどではないでしょうか。過渡期には、最終アウトプットが紙でも 2D でも 3D でもよいようにシステムを構築していく必要があります。

XVL には作業指示書を PDF 形式でも Excel 形式でも Web 形式でも配信できる仕組みがあります。形式ごとに作業指示書を作成していては、手間が増えて大変なことになりますが、XVL という統合フォーマットの中にすべての情報が含まれているので、どの形式であっても作業指示書を自動的に生成することができるのです。現場で実機上に作業指示書を表示するAR対応のシステムも早期に製品化予定です。ここまでのニーズは 3D データを徹底的に活用しようという XVL パイプライン* というコンセプトで実現してきたことと合致します。
*参考|XVL パイプライン

図1. XVL で実現してきた 3D 検証とマルチフォーマットによる作業指示書配信

コンテンツ管理、自動化、エンタープライズシステム統合がキー

第 3 の要素がコンテンツとしての資産管理です。どの 3D データから作成した作業指示書なのか、バージョンも含めてしっかり管理する必要があるといいます。多数の指示書を長期間に渡り管理しようとすれば、当然必要となる機能でしょう。

第 4 が設計変更への追従です。変更があった場合、それを正しく認識し、最小限の手間で作業指示書を更新できることは運用の手間を考えると必須でしょう。

これらのポイントは、正しい設計データの情報流通を実現するために開発した XVL Content Manager(XCM)* で実現してきたことです。現場での定着を見据えた作業指示書自動生成システムを考えたとき、配信される作業指示書データの正当性を常時保証することは極めて重要です。
*製品情報|XVL Content Manager(XCM)

図2. 正しい設計情報流通を実現する XCM で実現した 3つのこと

第 5 は人の工数を最小化するための自動化です。データ変換、設計変更履歴、データ配信、作業指示書の公開など可能な限り自動化して欲しいといいます。最後の要素が、エンタープライズレベルのシステムとの統合です。作業指示書に入れるべき情報が他のシステムから来ることもあれば、出来上がった指示書情報を他のシステムに渡すことも必要です。

これによって、PLM システムを取り巻く全システムからの情報を動的に扱うデジタルスレッドが表現できるようになります。これも XCM と XVL の持つ拡張性を利用すれば容易に実装することができます。

Casual3D で実現する作業指示書自動化

こうしてみると、ラティスが創業以来取り組んできた 「だれもがいつでもどこでも 3D」 という Casual3D の考え方に基づいて開発してきた XVL の作業指示書の考え方を端的に表現したのがこの 6つの要素だともいえるでしょう。Casual3D を実現するために周りのシステムとの連携で作業指示書に必要なデータを XVL に統合し、マルチフォーマットで作業指示書を自動生成可能にし、PLM からのデータの流れを創り、設計変更にも柔軟に追従できるようにしてきたのです。開発サイドのラティスの向かっていた道と、ユーザーサイドのロッキード マーティンの向かっていた道が同じ場所にたどり着いたという事実こそ、この 6点が本質的なポイントだということを示しています。

もう一点だけ開発サイドから付け加えるとすれば、ラティスは XVL の中にある作業指示関連の情報を長期に維持拡張しつつ、続々と現れる新デバイスに対応してきたということです。つまり、製造現場のデータは長期に渡り保管され利用されていくので、基盤となる XVL データは 20年前のものであっても、情報が再現できることが必須です。

その上で、ノート PC からタブレット、VR/AR 機器へと進化する新たなデバイス上でその情報を再現できるような XVL ソフトウェア群を続々と投入してきたのです。この結果 XVL ユーザーは、正しい設計情報に基づく、正しい作業指示を迅速かつ的確に現場に流すことが可能になりました。

さて、ソ連の将校スタニラフ・ペトロフは警報メッセージにどう対応したでしょうか。30分後には 5発のミサイルが飛んでくるかもしれないというひっ迫した状況の中、彼はこの警報は誤りだと考え却下、米国への報復攻撃は行われませんでした。世界を破滅の危機から救ったのです。では、彼はなぜそのような判断をしたのでしょう?それは米国が先制攻撃を仕掛ける場合、初めから大規模な攻撃になると告げられていたからです。

事前に情報が正しく伝えられ、それを人が正しく判断すれば、過ちは防げるのです。正しい情報を現場に伝えることの重要性を感じさせるエピソードです。

END

・XVL はラティス・テクノロジー株式会社の登録商標です。
・その他記載されている会社名および製品名は各社の登録商標または商標です。

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著者プロフィール

鳥谷 浩志 代表取締役 社長執行役員

鳥谷 浩志(とりや ひろし)
ラティス・テクノロジー株式会社 代表取締役社長/理学博士。株式会社リコーで 3D の研究、事業化に携わった後、1998年にラティス・テクノロジーの代表取締役に就任。超軽量 3D 技術の 「XVL」 の開発指揮後、製造業のデジタルトランスフォーメーション(DX)を 3D で実現することに奔走する。XVL は東京都ベンチャー大賞優秀賞、日経優秀製品サービス賞など、受賞多数。内閣府研究開発型ベンチャープロジェクトチーム委員、経済産業省産業構造審議会新成長政策部会、東京都中小企業振興対策審議会委員などを歴任。著書に 「製造業の 3D テクノロジー活用戦略」 「3次元ものづくり革新」 「3D デジタル現場力」 「3D デジタルドキュメント革新」 などがある。

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