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製造業 DX × 3D 成功のヒント|04.XVL と 3DEXPERIENCE 融合で生み出す価値
2022年1月5日
04.XVL と 3DEXPERIENCE 融合で生み出す価値
ラティス・テクノロジー株式会社 代表取締役社長 鳥谷 浩志
新型コロナの第 5波が急速におさまったのはワクチン接種の貢献が極めて大きいでしょう。従順な国民性と政府によるワクチンの調達によって 2021年12月末には接種率は約 80% となり、世界トップクラスになりました。ワクチンによって生成されるのが中和抗体、病原性を抑える作用のある抗体です。一度中和抗体ができれば、免疫の持つ記憶機能で、重症化のリスクも軽減されます。ワクチン接種で先行した欧米で流行が再燃し、米国で一日当たりの新規感染者数が百万人を超えるなど世界ではオミクロン株の感染拡大が続きます。年末まで劇的に感染を低水準に抑えてきた衛生大国日本でも、第 6波が懸念される不穏な年明けとなりました。2022年は 3回目の接種も有効活用し、感染を回避しながらの経済拡大に期待したいものです。
さて、このコロナ禍の中にあって、製造業のフロントランナーのトヨタ自動車自動車株式会社 (以下、トヨタ自動車) と、世界有数の PLM ベンダーの Dassault Systèmes (ダッソー・システムズ、以下、ダッソー社) は飽くなき挑戦を継続してきました。
今回は、2021年9月にラティス・テクノロジー株式会社 (以下、ラティス) のホームページで公開された対談のエッセンスを紹介します。このコラムでは、特にダッソー社の PLM である 『3DEXPERIENCE®』 とラティスの超軽量 3D 『XVL』 を統合することで生み出される価値について説明しましょう。
この取り組みの詳細に関しては、トヨタシステムズ株式会社(以下、トヨタシステムズ)の取締役 川添浩史氏と、ダッソー社の ENOVIA ブランドの CEO である Stephan Declee氏との鼎談で詳しく語っています。本稿では、そのエッセンスと開発に込めたラティスの思いを紹介しましょう。なお、下記のイメージをクリックいただくと対談ページに飛ぶことができます。
3DEXPERIENCE は PLM 業界の雄、フランスのダッソー社の開発する設計、製造、サービス、マーケティングに至る協調した開発プロセスを支援するプラットフォームです。これをいち早く導入したのが、100年に一度の大変革期にあるトヨタ自動車でした。
自動車開発には多数の部門、ボディメーカーや部品サプライヤなど、物理的に離れた多くの関係者間でのコラボレーションが必須です。3DEXPERIENCE を導入する最大の意義は、あたかも同じ場所で仕事をしているかのようなコラボレーションを実現することでしょう。脱炭素社会が到来する中、開発期間の短縮という大きな競争力を得るために、トヨタ自動車は 3DEXPERIENCE の導入を選択したわけです。
一方、トヨタ自動車において 3D 軽量フォーマット XVL は生技や工場、サービス分野などの後工程を中心に幅広く利用されてきました。自動車全体の大容量 3D データをサクサクと表示して検討したい、あるいは、現場の廉価な PC で 3D 表示したいというニーズが強くあったからです。当然、XVL と 3DEXPERIENCE を密連携することで、データの流通を迅速に、よりリアルタイムにしたいというニーズが出てきます。
そこで、ラティスは、ダッソー社との 3年間の共同開発を経て、XVL on 3DEXPERIENCE (以下、本システム) を製品化しました。製造業 DX (デジタルトランスフォーメーション) を 3D で実現する上で、設計の PLM システムと XVL とが連携することは一丁目一番地、本システムは製造業にとって大きな意味を持ちます。
本システムの価値を四点にまとめて説明しましょう。読むのが面倒だという人はビデオを参照ください
XVL on 3DEXPERIENCE が実現する製造業のデジタルトラスフォーメーション
⒈ 3DEXPERIENCE 上のネイティブデータとなった XVL
3DEXPERIENCE は当然のことながら、ダッソー社の CAD である CATIA V5 と密連携し、その設計データをコラボレーションに活用できるようになっています。特筆すべきは、3DEXPERIENCE はオープンなプラットフォームであり、シームレスなデータの流れを実現する基盤を提供しているという点です。
具体的には、CATIA V5 データと同等に XVL データを扱う、つまり、超軽量 3D データとしての XVL と CATIA データを等価的に扱う仕組みを提供していることです。システムとして、CATIA データと XVL データが 1 対 1 に存在することを原理的に保証できるのです。
こうして、CATIA で製品に対応する 3D デジタルツインの設計が完了する、つまり 3D 形状とアセンブリ構造の設計が完了すれば、それに対応する超軽量の 3D デジタルツインが XVL として存在できるようになります。その XVL を利用して、設計や生技、製造など関係者が “デジタル擦り合わせ” することが可能になります。
XVL という超軽量 3D フォーマットが 3DEXPERIENCE プラットフォームに搭載され、ダッソー社のフォーマットと同等にネイティブに扱えることが本システムの最大の特徴になります。
⒉ CATIA データに追従して生成される XVL
もう一つの特徴は XVL 変換の柔軟性です。目指すべき理想の姿は、CATIA データが生成されたと同時に XVL が生成され、設計や生技視点のレビューを直ちに開始することができるという姿です。一方、高い精度でエンジニアリング検証を行うには、CAD に近い曲面表現を持つ必要があるので XVL では曲面表現を採用しています。
このため CAD/XVL の曲面変換には若干時間がかかっていました。そこで、本システムでは可能な限り短時間でデータを追従させる仕組みを提供しています。
具体的には、3DEXPERIENCE 内に存在する CATIA データに関して、①定期的に XVL 変換を実行する、②今欲しいデータを直ちに XVL 化する、③変更のあったデータのみ XVL を更新する、といった仕組みにより理想に近い形で運用することができます。
実機にそのまま対応するフルの 3D デジタルツインで、「今」 レビューしたいというニーズが実現されつつあります。
開発期間の短縮には、設計段階で生産技術や製造、サービス視点でも3Dモデルをレビューし、これまで後工程で見つかってきた問題を早期に発見、解決しておくことが極めて有効です。
CATIA データと 1 対 1 に対応する XVL が存在し、3D モデルが設計されるのに追従する形で XVL が生成され、製品を構成するあらゆるアセンブリ単位で即座に誰もが 3D デジタルツインでレビューができる、このようなことがネットワーク越しに実現されたことで、関連部署やサプライヤの方々があたかも同席した状態で設計しているような状況を作り出すことができます。これを実現したのが本システムなのです。
⒊ 3DEXPERIENCE と密連携する XVL ソフトウェア
デジタルモックアップ・ツール XVL Studio が手軽に利用できるようになった点も大きなメリットです。3DEXPERIENCE の Web 画面内の製品構成を確認しながら、確認したいアセンブリをドラッグ&ドロップするだけで即座に XVL Studio で 3D 表示できるようになりました。
CATIA と同じ作法で XVL Studio を利用できるので、ユーザーは自然に 3D 活用範囲を広げることができます。煩わしいツールの切り替え作業を最小限にすることで、CATIA で設計、大規模データを XVL で確認、課題があれば CATIA で修正するといった一連の作業もスムーズになりました。設計者や生技担当者の思考を妨げることなく、デジタルなものづくりを支えていくことが可能になります。
⒋ オンラインとオフラインの 3D コラボレーション
本システムで実現した 3D のコラボレーションにはオンラインとオフラインの 2種類があります。
オンラインコラボとは、設計にリアルタイムに追従したコラボレーションのことで、周りの最新の設計状況を見ながら、担当する設計を進めていくことができます。オフラインコラボとは、ある時点で設計 3D モデルを固定して、それを利用して設計や工程を検証したり、作業指示書などの作成をすることです。グローバルな製造業は、グローバルなコラボレーションを必要とします。
本システムの提供するオンラインとオフラインの二つの 3D コラボレーションによって、海外出張や国内移動も大きな制限を受けたコロナ禍にあっても、世界規模の協調作業を支援することができます。XVL ソリューションはオフラインコラボを得意とします。
XVL による 3D デジタルツインとは、PLM システムのある時点でのスナップショットということもできます。XVL を利用した上流のデジタル擦り合わせで設計モデルの品質を創りこみ、出図以降はそのモデルで作業指示書やサービスマニュアルを作成しておきます。さらに、XVL Web3D 技術を使えば、3D デジタルツインをタブレットやスマホで表示することで、サービス会社や顧客まで巻き込んだ DX を 3D で実現することができます。もし、設計の 3D モデルが更新されても、対応する XVL が即座に生成され、設計変更に追従していくことができるので、作業がムダになることもありません。
2022年をアフターコロナ時代とするには、経口薬の登場が待たれます。風邪薬のように薬局で手軽に買えて重症化が抑えられる、また、タミフルのように熱が下がる、そのような特効薬の登場で新型コロナもインフルエンザ並みになってくれるでしょう。PLM のスナップショットである XVL は経口薬のように手軽に使え、製造業における DX を加速させることができるでしょう。皆様とともに 2022年を製造業にとって素晴らしい年としたいものです。
END
・XVL、3D デジタルツイン はラティス・テクノロジー株式会社の登録商標です。
・3DEXPERIENCE、Compass アイコン、3DS ロゴ、CATIA、BIOVIA、GEOVIA、SOLIDWORKS、3DVIA、ENOVIA、NETVIBES、MEDIDATA、CENTRIC PLM、3DEXCITE、SIMULIA、DELMIA および IFWE は、アメリカ合衆国、またはその他の国における、ダッソー・システムズ(ヴェルサイユ商業登記所に登記番号B 322 306 440 で登録された、フランスにおける欧州会社)またはその子会社の登録商標または商標です。
・その他記載されている会社名および製品名は各社の登録商標または商標です。
コラム 「製造業 DX × 3D 成功のヒント」 これまでの記事はこちらから
著者プロフィール
鳥谷 浩志(とりや ひろし)
ラティス・テクノロジー株式会社 代表取締役社長/理学博士。株式会社リコーで 3D の研究、事業化に携わった後、1998年にラティス・テクノロジーの代表取締役に就任。超軽量 3D 技術の 「XVL」 の開発指揮後、製造業のデジタルトランスフォーメーション(DX)を 3D で実現することに奔走する。XVL は東京都ベンチャー大賞優秀賞、日経優秀製品サービス賞など、受賞多数。内閣府研究開発型ベンチャープロジェクトチーム委員、経済産業省産業構造審議会新成長政策部会、東京都中小企業振興対策審議会委員などを歴任。著書に 「製造業の 3D テクノロジー活用戦略」 「3次元ものづくり革新」 「3D デジタル現場力」 「3D デジタルドキュメント革新」 などがある。
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